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中国、西日本豪雨災害と赤坂自民亭を大きく報道

2018年7月13日(金)15時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

西日本で記録的豪雨(写真は7月8日の倉敷市真備町) Issei Kato-REUTERS

中国の微博(ウェイボー)はいち早く災害の動画をネットに上げ、日本の惨状に驚くとともに、5日夜の赤坂自民亭の宴会にも失望の声を上げた。中央テレビ局CCTVと中国大陸のネットにおける報道を見てみよう。

最初に動画を流したのは微博

筆者が最初に今般の西日本豪雨災害に関する動画を見たのは、中国のネットユーザーが「微博(ウェイボー)」にアップした被災者の映像だった。一面の泥水の中に一軒の家の屋根だけがポツンと見え、その屋根の上に数名の人がのっかって助けを求める場面だ。おそらく近隣に住んでいる中国人が撮影したものだろう。

そこには中国語で「えっ!これが日本?日本って先進的で技術の高い国じゃなかったの?」というコメントがあった。日本の報道では、まだここまでの状況を映し出してなかった時のことである。

つぎに注意を引いたのは、やはり微博にアップされた「豪雨災害の中、自民党は党幹部らが宴会を開いていたんだってよ!人民の命より自分たちの政権の方が大事なのは、どの国も同じなんだ!がっかり!」というコメントだ。

しばらくすると、「人の命よりカジノの方が大事なんだ」というコメントも現れてきた。

ハッとして、中央テレビ局CCTVを観てみた。

CCTVでは

CCTVの国際関連では、タイのプーケット沖における、中国人観光客を乗せた船が転覆した事故が中心だった。船には中国人観光客120人余りが乗っており、7月5日に暴風雨に遭って転覆した。40人以上が死亡し、行方不明者がまだ見つかっていないが、タイの洞窟に閉じ込められたサッカー少年たちの救助に優秀な潜水員たちが回されてしまって、転覆した船の行方不明者を捜索する人員が足りない。タイ政府側は、「われわれの警告を無視した中国のツアー業者側に責任がある」と突っぱねたものだから、CCTVの報道は、被害者親族らの怒りといら立ちに満ちていた。

そのような中でも、西日本の豪雨災害に関する報道にそれなりの時間を割き、災害がここまで広がった原因の一つに「中央行政と地方行政の連携のまずさがあり、特に気象庁の予報と日本政府の呼応が十分でなかった」という趣旨の解説をした。

何を言おうとしているのか、瞬時には理解できない解説だ。

ネットで大きく扱った豪雨災害と赤坂自民亭

そこで中国大陸のネット空間を調べてみた。

すると、西日本豪雨災害に関する情報のほとんどが、赤坂自民亭での酒宴の話と結び付けて報道されているのを知った。

たとえば、「日本暴雨130人死亡なのに、防衛相は宴に顔を出すことを忘れていない」とか「日本は大雨で130人死亡、防衛相はそれでも宴に参加し"救助に差し障りはない"と表明」などがある。同じものをあちこちが転載して広がっているようで、災害の悲惨さとともに、災害が進行しているのに安倍首相は自民党が主宰する酒宴で気勢をあげていた、というのが主たる内容だ。

リンクしたページの小野寺防衛相の写真の少し上に書いてある「7月5日」という文字の付近を見て頂きたい。そこには「7月5日の昼間(白天)、気象庁が今回の暴雨は尋常ではない激しさで、記録的な大雨となり得るので、厳重な警戒が必要だという警報を出しているのに、安倍内閣の陣営はなぜ(同じ日の夜の)宴に駆け付けたのか?」「果たして危機管理意識はあるのか?」などとある。

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