最新記事

中国軍事

中国、南シナ海で兵士数千人規模の宿舎を大量建設

2018年5月25日(金)16時30分
ソフィア・ロット・ペルシオ

3月20日付のスビ礁の衛星画像 lanet Labs Inc/Handout via REUTERS

<中国が、領有権を主張する南シナ海で戦力配備を激化させている。アメリカは環太平洋合同演習から中国を排除するなど、警戒を強めている>

中国が南シナ海に建設した7つの人工島のうち、「ビッグスリー」に数えられるスビ礁に、中国人民解放軍の部隊が泊まれる400余りの宿舎が建設されていることが、衛星画像で判明した。

米デジタルグローブが提供した高解像度の衛星画像と、米アースライズ・メディアによる画像の分析結果を、ロイター通信が5月24日に公表した。

ロイター通信は安全保障専門家の話として、残る2つの「ビッグスリー」であるミスチーフ礁とファイアリー・クロス礁にも、2000人規模の海兵隊が泊まれる建物がある、と報じた。2つの人工島にはそれぞれ、スビ礁と類似の軍事施設や構造物が190カ所も建設されている。そのスビ礁には、ミサイルの砲台や格納庫、滑走路のほか、バスケットボール用のコートまで整備されている。

webw180525-china02.jpg
中国がスビ礁に建設した施設 Erik De Castro-REUTERS

中国は近年南シナ海で埋め立てや建設を進め、最近ではミサイルや爆撃機の展開も始まり、東南アジア諸国や台湾も領有権を主張している海域を実質的に支配している。

中国は5月18日、「南シナ海での戦闘」を想定した軍事演習の一環として、核搭載可能なH6K爆撃機を南シナ海の複数の人工島や環礁に着陸させたと発表。離着陸訓練が行われたとみられる西沙(パラセル)諸島の領有権を主張するベトナム政府は、激しく抗議した。

アメリカもけん制するが

一方、中国本土から約800キロ離れ、南シナ海のほぼ中央に位置する南沙(スプラトリー)諸島は、100以上の島や環礁などから成り、豊かな漁場があるうえ、莫大な量の石油・天然ガス資源が眠っている可能性があるため、台湾、ベトナム、マレーシア、フィリピンも滑走路や港、リゾート施設などを造ってきた。ブルネイも自国の排他的経済水域(EEZ)と重なると主張している。

中国による軍事拠点化の動きは、東南アジア諸国だけでなく、国際法に基づく当然の権利として「航行の自由」作戦を実施するアメリカやイギリスとの緊張も高めてきた。

米国防省は5月23日、原則2年に1度、20か国以上の海軍が参加する「環太平洋合同演習」(リムパック)について、今年は中国に対する招待を取り消したと発表。中国が南シナ海で「軍事拠点化を続けている」ことを理由に挙げた。中国は初参加となった2014年、次の2016年に続き、今年も参加を表明していたが、アメリカに排除された格好だ。

(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、準備金目標範囲に低下と判断 短期債購入決定

ビジネス

利下げ巡りFRB内で温度差、経済リスク綿密に討議=

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、156円台前半 FRB政策

ワールド

米下院特別委、中国軍の台湾周辺演習を非難 「意図的
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中