最新記事

アメリカ社会

新極右「オルト・ライト」も結局は低迷

2018年4月20日(金)19時00分
マイケル・エディソン・ヘイデン

magw180420-alt02.jpg

フロリダ大学で行われたスペンサーの演説に抗議するデモ隊(17年10月) Shannon Stapleton-REUTERS

昨年8月の時点では、状況はまるで違って見えた。バージニア州シャーロッツビルで行われた白人至上主義の集会「右派団結」には、1000人もの白人男性が集まった。

しかし、大勢の反差別活動家も現地に駆け付け、両者の間で小競り合いが起きた。そして、極右思想の持ち主である20歳のジェームズ・フィールズが自動車で群衆に突っ込み、抗議に来ていたヘザー・ハイヤーの命を奪ったとされる。大半の主流メディアはこの事件に衝撃を受け、共和党政治家もほとんどがオルト・ライトと距離を置くようになった。

逆風はまだ続いた。昨年10月には、スペンサーがフロリダ大学を訪れた際に起きた発砲事件で、支持者3人が殺人未遂で逮捕された。同じく10月にテネシー州で行われた集会は、抗議グループの半分しか参加者を集められなかった。

32歳だった白人女性、ケイト・スタインルの死をめぐる問題も見落とせない。スタインルは15年6月、不法移民のメキシコ人男性が発砲した銃の流れ弾に当たって死亡したが、男性は裁判で無罪になった。

その評決に抗議してネオナチと白人至上主義者がホワイトハウス前に集まり、スペンサーやペイノビッチのようなオルト・ライトの大物たちもスピーチをした。選挙中のトランプが事件に言及したこともあり、オルト・ライトが勢力を誇示する場になっても不思議ではなかった。

しかし、集まった白人男性は20人ほど。大勢の反差別団体のメンバーから抗議の声を浴びせられた。結局、30分もたたずに警察に導かれて退散する羽目になった。メディアでもほとんど取り上げられなかった。

反対派によれば、オルト・ライトは新しい運動ではなく、さまざまなヘイトグループが名称を変えたものにすぎない。シャーロッツビルの出来事は、一過性の例外だったというわけだ。

「歴史的に見て、白人至上主義の運動はばらばらに分裂するのが普通」だと、ヘイトグループを監視する名誉毀損防止連盟(ADL)のカーラ・ヒルは言う。「彼らはシャーロッツビルで『右派団結』集会を開いたが、そもそも彼らが本当に団結したことなど一度もない」

いわゆるアンチファ(反ファシズム)の抗議活動家は、最近のオルト・ライト失速は自分たちの功績だと主張する。『アンチファ――反ファシスト・ハンドブック』の著者マーク・ブレイによれば、白人至上主義者はトランプ政権1年目の終わりまでに、公共の場での組織的動員が不可能になった。

シャーロッツビルとその後の集会は、この種の活動が必然的に逮捕、抗議、内紛につながることを示したと、ブレイは言う。「私は慎重ながらも楽観的だ。近い将来、アンチファについて語る必要もなくなるだろう」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中