最新記事

医療

武田薬品、7兆円規模の買収で世界トップ10入り目指す 試されるウェバー社長の手腕

2018年4月26日(木)19時32分

社内取締役4人のうち3人が外国人、戦略策定を担うタケダ・エグゼクティブ・チーム(TET)は14人中11人が外国人だが、こうした数え方も今の武田では意味をなくしている。3月末で突然退社を発表した前CFO(最高財務責任者)のジェームス・キーホー氏の後任は、他社からの移籍ではなく、欧州カナダビジネスユニットのCFOを務めているコスタ・サロウコス氏を起用した。日本人か外国人かではなく、グローバルな武田の中で有能な人員を登用する仕組みができつつあると言える。

社内体制の国際化が進む一方、武田の企業規模は、国際的なメガファーマに大きく水をあけられている。2015年の大手製薬メーカーの売上高で武田は17位で、首位のファイザーの3分の1の規模に過ぎない。今回、シャイアーを買収することでトップ10入りが実現する。

武田は、2025年に消化器系疾患でNO1、がんでトップ10、中枢神経系疾患領域と新興国で強固なプレゼンスを獲得することを中期目標に掲げている。UBS証券のアナリスト、関篤史氏は「中計実現のためにも、ある程度の規模のM&Aは必要になってくる」とみていた。

長期的取り組み

企業買収を多く手掛けたある企業のトップは、武田のシャイアー買収という「チャレンジ」を評価しながらも「買収は目的ではなく、そこがスタートライン。大きな買収だけに、株主や従業員、関係者に対し、納得できる成長戦略の説明ができるかが重要」と話す。

こうした懸念に対して、ウェバー氏と一緒に働いたことのある人物からは、同氏が急激な変化を説明する能力に長けており、グローバルに拡大しようとしている会社の理想的なリーダーだとの評価も聞かれる。

グローバル企業では、会社を渡り歩きながら自身のキャリアアップを図る経営者も少なくない。一方、ウェバー氏は、オーストラリアで1年勤務した後、英製薬大手のグラクソ・スミスクライン(GSK)に入り、同社一筋に歩んできた。2014年に武田薬に移って4年が経過したが、2025年まで社長を務めると公言しており、武田を真の国際企業にすべく、長期的に取り組む姿勢だ。

(清水律子 取材協力:サム・ナッセイ 編集:北松克朗)

[ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 独占取材カンボジア国際詐欺
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月29日号(4月22日発売)は「独占取材 カンボジア国際詐欺」特集。タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中