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メキシコでテキーラ原料のアガベ不足が深刻化 世界的人気が裏目に

2018年2月4日(日)13時04分

メキシコのハリスコ州でテキーラの原料のアガベを収穫する農場作業員。2017年9月撮影(2018年 ロイター/Carlos Jasso)

メキシコのテキーラ生産中心地、西部ハリスコ州が、ニューヨークから東京に至る幅広いテキーラ人気を反映した、深刻な原料不足に悩まされいる。

テキーラの原料アガベ・テキラーナは、青みを帯びた鋭い葉が特徴の多肉植物で、この2年で価格が6倍に跳ね上がった。これにより、小規模な酒造メーカ―の利益を圧迫するだけでなく、大規模メーカーも原料不足の直撃を受ける恐れが出ている。

十分に成長したアガベの不足を補うため、まだ成長途中の若いアガベを使わざるを得なくなった──。アマチタン村近郊で、テキーラ向けにアガベを加熱する大きな金属製オーブンの前にいた農家の男性は、そう語る。アガベは、成長するのに7─8年かかる。

この男性は、若い原料を使っていることを取引先に知られたくないと、氏名の公表を拒んだ。

若いアガベを使うと、生産できるテキーラ量が減る。このため、供給が限られている中で、より多くのアガベを前倒し収穫しなければならず、悪循環に拍車がかかる。

「他に使えるものがないから、彼ら(メーカー)は4年ものを使っている。自分が売ったのだから、確かだ」と、メキシコ中部グアナフアト州の生産者マルコポーロ・マグダレノさんは言う。

テキーラは、原産地名称の保護制度により生産が厳しく規定されている。グアナフアト州は、アガベ生産が認められた数少ない州の1つだ。

ロイターがテキーラ業界の専門家10人以上に取材したところ、収穫前倒しにより、2018年は原料不足が悪化すると見込まれている。

テキーラ規制委員会(CRT)と全国テキーラ産業会議所(CNIT)のデータによると、2011年に植えられたブルーアガベは1770万株で、登録メーカー140社が今年必要とする総計4200万株を大きく下回っている。

原料の作付増加戦略が実を結ぶまでには年数がかかるため、アガベ不足は2121年まで続く見通しだと、生産者は指摘する。

その結果、アガベ価格は1キロ22ペソ(128円)に急騰。2016年は同3.85ペソだった。

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