最新記事

トランプ暴露本 政権崩壊の序章

トランプ暴露本の著者は「フェイク」ジャーナリストなのか?

2018年1月16日(火)10時30分
ライアン・シット

『炎と怒り』著者としてNBCの『トゥデー』でインタビューに臨むウルフ BRENDAN MCDERMID-REUTERS


0123cover-150.jpg<ニューズウィーク日本版1月16日発売号(2018年1月23日号)は、緊急特集「トランプ暴露本 政権崩壊の序章」。話題の暴露本『炎と怒り(Fire and Fury)』の知っておくべきポイントと無視できない影響力を検証したこの特集から、本の著者マイケル・ウルフのプロフィール記事を転載。果たして暴露本騒動はトランプ政権の終わりの始まりとなるのか?>

マイケル・ウルフは、記者人生で絶頂を極めたのかもしれない。

ジャーナリスト兼作家、今やメディアの寵児であるウルフは、メディア王ルパート・マードックや不祥事を起こした映画プロデューサーのハービー・ワインスティーンといった富豪や有力者を取材。執筆で得たコネでニューヨークのセレブに成り上がった。彼の恋愛はゴシップ誌のネタとなり、彼の著作はUSニューズ&ワールドリポート誌オーナー兼編集長モーティマー・ザッカーマンの称賛を受けた。

04年のニュー・リパブリック誌の人物ルポで、筆者のミシェル・コトルはウルフをこう評した。「典型的なニューヨークの権化で、ご執心なのは文化、スタイル、流行、そしてカネ、カネ、カネ」。ウルフにとって、億万長者ほどそそられるものはない、とコトルは書いた。それが事実なら、億万長者の政権について書くことほど興味深いことがウルフにあり得ようか。ウルフは今、『炎と怒り』で注目の的だ。

御世辞の上手な肖像画家

ウルフは熟練した生涯一記者だ。ニュージャージー州生まれで、新聞記者の母マーガレットと宣伝マンの父ルイスのもとで育った。大人になって仕事の経験を積むにつれて、両親譲りの才能を開花させた。

その経歴はニューヨーク・タイムズ紙の雑用係から始まった。続いてニューヨーク誌のコラムニスト、ガーディアン紙やハリウッド・リポーター誌、GQ誌イギリス版の常連筆者となった。これらのメディアは今回、軒並み『炎と怒り』の抜粋を掲載している。

USAトゥデー紙のコラムやバニティ・フェア誌の編集にも携わり、少しの間だけ業界誌アドウィークの編集長だったこともある。02年と04年に評論で全米雑誌賞を受賞。03年にも候補となった。07年には記事まとめサイト「ニューサー」を始めた。

それだけ派手な経歴がありながらも、いまツイッターやニュースサイトのレディットは『炎と怒り』を偽ニュースと非難する人にあふれている。攻撃材料として、ウルフの著作に対する過去の疑惑の数々が掘り返された。

レディットのトランプ板では、「偽ニュースどころか、偽コメントが人物の実名入りで書かれている」と告発されている。レディットのユーザーたちはブリルズ・コンテント誌(休刊)の告発記事を発掘。98年のウルフの著作『バーン・レート』に出てくる複数の人々がウルフは「発言を偽造、変更した」と暴露している。

08年には、ニューヨーク・タイムズのデービッド・カーもウルフのマードック評伝を辛辣に書評した。「ウルフの業績を歴史的に振り返れば、その問題点は、全てをお見通しであるかのような視点で書きながら、事実誤認が散見されることだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中