「中国のエルサレム」浙江省・温州 当局の弾圧と闘うキリスト教徒
12月24日、キリスト教徒コミュニティーを多く抱え「中国のエルサレム」とも呼ばれる中国南東部浙江省の都市・温州は、子ども向けの宗教教育を巡る中国指導部と敬虔(けいけん)な信者たちの対立激化の最前線となっている。写真は温州の教会。18日撮影(2018年 ロイター/Christian Shepherd)
キリスト教徒コミュニティーを多く抱え「中国のエルサレム」とも呼ばれる中国南東部浙江省の都市・温州は、子ども向けの宗教教育を巡る中国指導部と敬虔(けいけん)な信者たちの対立激化の最前線となっている。
公式には無神論の立場をとる中国共産党は、キリスト教の影響力を抑制するための取り組みを強めており、信仰教育に対する制限を強化し、キリスト教の「欧米風」な思想に警告を発している。
とはいえ、温州のキリスト教社会の決意の固さから見て、国内6000万人に上る信者の子どもたちに対して共産党が統制を及ぼそうとしても苦労するだろう、と同教徒らは語る。
温州では、今年に入って、キリスト教会の日曜学校が当局により禁止された。だが、子どもたちにイエス・キリストや聖書について学ばせようという親たちの決意は固い。
温州の各教会は、個人宅やその他の場所を使って子どもたちを教育するようになった。現地の信者らがロイターに語ったところでは、日曜学校は教育ではなく託児サービスと称するところもあれば、毎週土曜日に変更したところもあるという。
微妙な問題ゆえ、Chenとだけ名乗る信者の親は、彼女の家では「大切なのは信仰で、成績は二の次」だと言う。
クリーム色の毛皮コートをまとった小奇麗ないでたちで、大きなターコイズの指輪をはめたChenさんは、温州に多い、富裕な信者の1人だ。国家による教育は、十分な道徳的・精神的指導に欠けているため、子どもたちは聖書の授業に出席しなければならない、と彼女は語る。
「今日の若者のあいだでは麻薬、ポルノ、賭博、暴力が深刻な問題となっており、ビデオゲームの誘惑も非常に強い」と彼女はロイターに語った。「いつも子どもの傍らにいるわけにもいかない。(どういう行動が正しいのか)子どもに理解させるには、信仰に頼るしかない」
状況を直接知る情報提供者3人によれば、温州の一部地区では、8月以来、公式の命令により日曜学校が禁止されているという。
キリスト教系のニュースサイト「ワールド・ウオッチ・モニター」が9月報じたところでは、浙江・福建・江蘇・河南の各省、そして内蒙古自治区では、子どもたちがサマーキャンプなどの信仰活動に参加することが禁止されているという。
こうした政策が地方政府主導なのか、中央政府の指令によるものかも定かではない、とロイターの取材に応じた情報提供者は話す。また中国国内で他の宗教についても同様の禁止措置があるかどうかも分からないという。
9月には、宗教教育に対する国家の監督を全国規模に拡大する新たな規則が発表された。当局者によれば、党に忠実な新世代の宗教指導者を生み出す試みだという。
中国の国家宗教事務局と温州市政府広報部に対してコメントを求めるファクスを送ったが、回答は得られなかった。