最新記事

がん

血液検査で8種類のがんを発見する画期的な検査法が開発される

2018年1月23日(火)18時45分
松岡由希子

卵巣がんや肝がんなどの早期発見に期待 AzmanJaka-iStock

<米ジョンズ・ホプキンス大学の研究プロジェクトは、血液サンプルから8種類のがんを検知し、疾患の部位の特定にも役立つ新たな検査法「キャンサー・シーク」を開発した>

"生涯で2人1人ががんに罹患する"といわれる日本のみならず、米国でも、多くの人々が、がんに罹患している。アメリカ国立がん研究所(NCI)によると、2016年時点で、米国で新たにがんと診断された人は168万5210人にのぼり、59万5690人ががんによって命を落とした。

とりわけ罹患数が多いのは、乳がん、肺がん、前立腺がん、大腸がん、膀胱がん、腎臓がん、膵臓がんなどが挙げられている。いわずもがな、がんによる死亡を防ぐには、早期発見が重要だ。

血液サンプルから8種類のがんを検知する「キャンサー・シーク」

米ジョンズ・ホプキンス大学キンメルがんセンターの研究プロジェクトでは、血液サンプルから8種類のがんを検知し、疾患の部位の特定にも役立つ新たな検査法「キャンサー・シーク」を開発し、2018年1月、学術雑誌「サイエンス」にその研究成果を発表した。

「キャンサー・シーク」は、がん細胞の特徴を示す16種類の遺伝子と8種類のタンパク質をもとに初期のがんを検知するというものだ。多くの場合、体内の細胞ががんにかかると、突然変異により制御不能になって増殖し続け、突然変異した細胞は、死滅すると、その一部が血中に流れ出る。

そこで、研究プロジェクトでは、血中に流れ出た細胞の遺伝子に着目。複数種のがんによって突然変異する16種類の遺伝子と、特定のがんの特徴を表わす8種類のタンパク質バイオマーカーを組み合わせ、卵巣がん、肝がん、胃がん、膵臓がん、食道がん、大腸がん、肺がん、乳がんの8種類のがんを発見する検査法を開発した。

がん検査の精度を評価する上で指標となるのが、がんであるものをがんと正しく判断する「感度」と、がんでない人をがんでないと正しく判断する「特異度」だ。

卵巣がんや肝がんなどの早期発見に期待

研究プロジェクトでは、進行度が1期から3期までのがん患者1005名を対象に「キャンサー・シーク」による血液検査を実施した。その結果、これら8種類のがんにおける感度は、概ね70%を記録したという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

日鉄、USスチール買収実行の予定時期を25年第1四

ビジネス

日経平均は続伸し400円超高、年明け相場期待の買い

ワールド

中国、チベットに世界最大級の水力発電ダム建設へ 

ビジネス

世銀、中国GDP予測を上方修正 24年4.9%・2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシアの都市カザンを自爆攻撃
  • 4
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 5
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命を…
  • 6
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 7
    「とても残念」な日本...クリスマスツリーに「星」を…
  • 8
    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …
  • 9
    日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落
  • 10
    ウクライナ特殊作戦による「ロシア軍幹部の暗殺」に…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 5
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 6
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 7
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 8
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 9
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 10
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 10
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中