最新記事

中国社会

中国人の北朝鮮観光は止まらず 政府の規制を国境都市が緩和

2017年12月22日(金)17時16分

12月20日、先月のトランプ米大統領訪中を前に中国当局が非公式に禁止したにもかかわらず、中国人観光客が依然として国境沿いの丹東市から北朝鮮の首都平壌を訪れていることが分かった。写真は中国人観光客。丹東付近で8月撮影(2017年 ロイター/Philip Wen)

先月のトランプ米大統領訪中を前に中国当局が非公式に禁止したにもかかわらず、中国人観光客が依然として国境沿いの丹東市から北朝鮮の首都平壌を訪れていることが分かった。観光業界筋が明らかにした。

関係筋2人がロイターに語ったところによると、中国人観光客40人の一行は15日、丹東から平壌に向けて出発した。地元当局が、北朝鮮観光を制限するという中央政府の指示を積極的に実施していないことを示している。

「指示が出されて以来、丹東から北朝鮮を訪れた最大の観光客グループだった」と、ある旅行業者は語る。列車で北朝鮮を訪れる4日間のツアーに参加する一行だという。

この記事に関し、丹東市の観光局は取材を拒否した。コメントを求められた中国外務省は「状況を理解していない」とした。

中国の地元企業は、良いときであろうが悪いときであろうが、中央あるいは地方当局が導入した政策の抜け穴を見つけることで知られる。

「政府の政策を迂回する方法は必ずある」と、丹東で観光業に携わるある人物は話す。「中国人とはそういうものだ」

「丹東の規制解除に、中央政府は非常に腹を立てると思う」と、この観光業者は語った。

北朝鮮の稼ぎ頭

北朝鮮への観光は国連により禁止されておらず、同国にとっては残された数少ない外貨獲得手段となっている。シンクタンク韓国海洋開発院の試算によると、北朝鮮は観光業によって年間約4400万ドル(約50億円)の収入を得ている。

北朝鮮が過去1年でミサイル開発を加速させているのを受け、国連は同国への制裁を強化しており、石炭や海産物や繊維など主要産業の輸出を抑制している。

北京を拠点に北朝鮮ツアーを企画する高麗旅行社のサイモン・コッカレル氏は、平壌で11月半ばに中国人観光客を乗せたバス3、4台を目にしたが、「彼らがどこから北朝鮮に入国したのか、またどのような査証(ビザ)で来ているのか分からない」と語った。

「北朝鮮のビザは、行ける場所、行けない場所について明記していない。したがって、中朝国境を挟んで丹東の向かい側の新義州市、あるいは羅先特別市から入国したら、平壌へ向かうことが可能だ。北朝鮮人は気にしない」

両市は、中国人観光客が陸路で北朝鮮を訪れる際に人気の入国地点となっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

自民が対米交渉で会合、赤沢再生相「国益や効果考え抜

ワールド

赤沢再生相が16日─18日に訪米、財務長官・通商代

ワールド

中国・ベトナム協力、鉄道2路線の実現可能性調査盛り

ビジネス

日経平均は続伸、米関税への過度な警戒が緩和 自動車
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトランプ関税ではなく、習近平の「失策」
  • 3
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができているのは「米国でなく中国」である理由
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 6
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 7
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 8
    シャーロット王女と「親友」の絶妙な距離感が話題に.…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 10
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中