最新記事

中国

中国が密かに難民キャンプ建設──北朝鮮の体制崩壊に備え

2017年12月14日(木)15時38分
クリスティーナ・チャオ

中朝国境に面した恵山市の家並み John Ruwitch-REUTERS

<難民キャンプのネット接続サービスを請け負ったらしい国営チャイナ・モバイルの内部資料から明らかになった詳細とは>

中国は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)体制崩壊による難民の大量流入に備え、1400キロ余りの国境沿いに数カ所の難民キャンプを建設する計画を密かに進めている。

朝鮮半島の危機に備えた難民キャンプ建設計画の詳細は、国有の通信大手・中国移動通信(チャイナ・モバイル)の内部資料から明らかになった。12月7日に資料の一部が中国のソーシャルメディア「微博」を通じて一気に拡散。英紙フィナンシャル・タイムズが10日に報じた。

資料(本誌の調査では信憑性を確認できなかった)によると、チャイナ・モバイルは難民キャンプのインターネット接続サービスを請け負ったとみられ、中国北東部の吉林省白山市にある北朝鮮国境の町、長白朝鮮族自治県の3つの村と、省内の2つの都市に難民キャンプが建設されるという。

「国境を越えた情勢の緊迫化により......党委員会と長白朝鮮族自治県政府は、5カ所の難民キャンプの設置を提案した」と、資料には書かれている。

資料には、チャイナ・モバイルが「北朝鮮との国境沿いの緊張」に対応するため、工事を請け負ったことが明記され、長白朝鮮族自治県の3カ所の建設予定地も記されている。

北朝鮮との国境沿いに点々と

加えて、米紙ニューヨーク・タイムズによると、吉林省の2つの都市、図們と琿春にも難民キャンプが建設される予定だと、地元の実業家が匿名で明かしたという。この2つの都市は国境の川・図們江(豆満江)を挟んで北朝鮮に面し、脱北者の収容所がある。

一方、長白朝鮮族自治県は、鴨緑江を挟んで北朝鮮の恵山市の対岸に位置し、金政権が9月3日に行った地下核実験の震動が感じられたほど北朝鮮に近い。

「政府はこれらの収容先を指定したが、心配することはない。地元ではパニックは起きておらず、騒ぐようなことではない」と、チャイナ・モバイルの長白支社の広報担当は述べた。

11日に行われた中国外務省の定例記者会見では、陸慷(ルー・カン)報道官は難民キャンプの建設計画について「そうした報道は目にしていない」と述べ、事実とは認めなかったが、否定もしなかった。

中国は北朝鮮の政治的混乱、さらには体制崩壊の可能性を懸念しており、密かに進む難民キャンプ建設もその表れと見ていい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国、務安空港のコンクリート構造物撤去へ 旅客機事

ワールド

中国の太陽光・風力発電の新規導入容量、24年も記録

ワールド

トランプ政権、沿岸警備隊の女性トップ解任 DEI政

ワールド

トランプ氏、多様性政策撤廃の動き加速 民間部門の調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの焼け野原
  • 3
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピー・ジョー」が居眠りか...動画で検証
  • 4
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    大統領令とは何か? 覆されることはあるのか、何で…
  • 7
    世界第3位の経済大国...「前年比0.2%減」マイナス経…
  • 8
    トランプ新政権はどうなる? 元側近スティーブ・バノ…
  • 9
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 10
    「敵対国」で高まるトランプ人気...まさかの国で「世…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中