最新記事

ミサイル防衛

アメリカも北朝鮮のミサイルすべては迎撃できない

2017年12月5日(火)16時00分
クリスティーナ・マザー

アメリカ全土に届くといわれる新型ICBM「火星15号」を見てアメリカ人も迎撃準備を心配し始めた KCNA-REUTERS

<北朝鮮がワシントンまで届くICBMを持ったなら、ミサイル防衛システムで着弾する前に迎撃しなければならないが>

北朝鮮がアメリカに向けてミサイルを発射した場合、アメリカのミサイル防衛システムが破られる可能性がある――複数の軍事専門家はそう証言している。

北朝鮮は11月29日に、新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を行い、首都ワシントンを含むアメリカ全土を攻撃できる技術をついに手にしたことを誇示した。

ICBMの弾頭に核爆弾を搭載できる技術があるのかどうかはまだわからない。しかし、北朝鮮のミサイルがアメリカ本土に到達可能だと明らかになったことで、万が一攻撃を受けた場合、アメリカのミサイル防衛システムで本当に防衛できるのかが議論になっている。

トランプ大統領は10月、FOXニュースのインタビューを受けた際、アメリカは「世界で最も優れた軍備を誇っている」と言った。

「われわれは、飛行するミサイルを97%の確率で迎撃できるミサイルを持っている。それを2発発射すれば撃ち落とせるだろう」

しかし、それは事実ではないと多くの軍事専門家は言う。

すべては撃ち落とせない

英シンクタンク国際戦略研究所(IISS)のミサイル防衛専門家、マイケル・エルマンは本誌に対し、「実験では迎撃ミサイル(インターセプター)は2回に1回命中する。50%の確率だ。それもあくまでも統計上の話であり、命中しなかった理由はどれも一緒という前提の上でのことだ。私はそんなに信頼はしていない」と述べた。

「北朝鮮が発射するミサイルが1発だけなら、おそらく撃ち落とせるだろう。しかし、北朝鮮の新型ミサイルが、シンプルなデコイ(おとり)を搭載してくる可能性もある。アメリカの迎撃ミサイルにデコイと弾頭の区別かつくかどうかはわからない」

アメリカのミサイル防衛システムは、複雑なレーダー網と衛星センサー、迎撃ミサイルから構成されており、飛来するあらゆる弾頭を探知・破壊することを目的としている。理想は、ICBMが発射されたら、防衛システムがすぐに追跡を開始し、迎撃ミサイルを発射して飛んでくるミサイルを撃墜することだ。

アメリカは、北朝鮮から飛来する弾頭の撃墜に対応が可能な迎撃ミサイルを、アラスカ州とカリフォルニア州におよそ40基配備している。約400億ドルを投じた同システムは、「拳銃の弾を拳銃の弾で撃ち落とす」ことにたとえられるほど精密なものだ。

しかし同システムの発射実験では、すべてのターゲットを撃ち落とすことはできていない。北朝鮮のミサイルがアメリカの防衛システムをすり抜ける可能性はある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中