海外資金頼みのトルコに暗雲 米国の対イラン制裁違反に銀行が関与か
11月29日、トルコ人実業家による米国の対イラン制裁違反に銀行が関与した疑いが浮上したことで、銀行の海外での資金調達に支障が生じる恐れが出てきた。写真はトルコリラ紙幣。2014年撮影(2017年 ロイター/Murad Sezer)
トルコの銀行は2000年の金融危機以降、自己資本の充実に取り組み、経営が新興市場で最も優良と称賛を浴びてきた。しかしトルコ人実業家による米国の対イラン制裁違反に銀行が関与した疑いが浮上したことで、銀行の海外での資金調達に支障が生じる恐れが出てきた。
外国資金に頼るトルコ経済にとって、資金流入ストップや対外流出といった最悪の事態にも発展しかねない雲行きだ。
海外投資家がトルコへの懸念を強める理由は種々ある。格付けは引き下げの可能性があり、二桁のインフレ率にもかかわらず政府は利上げに抵抗している。ただ、足元では米国の対イラン制裁に違反したとして複数のトルコ人が起訴され、トルコの複数の銀行がこの事件に巻き込まれる可能性が、懸念の中核を成している。
イランの政府や企業に外貨を融通したとして制裁違反に問われているトルコ人実業家は裁判で罪を認め、トルコ国有銀行ハルクバンクの幹部などが関わったとされる不正の概要を証言する見通しだ。
銀行の関与が事実なら多額の罰金が科せられ、金融機関やトルコ経済に深刻な影響が及んでもおかしくない。
BNPパリバ・アセット・マネジメントの新興市場債ポートフォリオマネジャー、アラー・ブシェリ氏は「実際に罰金処分が下れば、トルコの銀行に融資できるかどうかがはっきりするまで、トルコ向けの全融資が停止するだろう」と述べた。
トルコは銀行のドル建て債による調達が対外債務の3分の1を占める。銀行株は8月半ばから20%下落。トルコリラは対ドル、ユーロ相場はこの3カ月間で10%以上も下落し、2012年末からの下落率が50%を超えた。
トルコ紙ハベルチュルクはトルコの6つの銀行が数十億ドル相当の罰金支払いを求められる可能性があると伝え、規制当局や政府高官は報道内容を否定した。
しかしBNPパリバのブシェリ氏によると既にトルコの銀行のドル建て債には影響が出ており、国債との利回り差が平均で100ベーシスポイント(bp)に広がっている。一方で大手ノンバンクの社債の大半は、利回りが国債よりも低いという。