米ロの新たな軍拡競争 オバマ政権の核兵器近代化が引き金に
2013年6月、北アイルランドで会談するオバマ米大統領(当時)とプーチン露大統領(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)
バラク・オバマ氏は2009年、「核なき世界」構築に向け努力すると訴えて、米国大統領に就任した。その誓いは同年のノーベル平和賞受賞にも寄与した。
その翌年、米国は核攻撃への報復能力を維持すると警告する一方で、新型核兵器は開発しないと、オバマ氏は約束している。大統領就任から1年4カ月のあいだに、米国とロシアは信頼を築き、核戦争のリスクを減らすことを目的とした新戦略兵器削減条約(新START)の締結交渉を行った。同条約により、両国が配備できる戦略核弾頭数はそれぞれ1550発に制限された。
だが、オバマ大統領が退任した2017年1月になっても、アルマゲドンが起きるリスクは後退しなかった。それどころか、米国は保有する核兵器のほとんどの精度と殺傷力を高める近代化プログラムを進めていた。
一方、ロシアも同じことをしていた。冷戦後、兵器は放置され、ひどく劣化していた。ロシア政府はプーチン大統領の下で、米国よりも一足早く兵器の近代化に着手。新型で、より強力な大陸間弾道ミサイル(ICBM)や一連の戦術核兵器を開発した。
トランプ大統領は、オバマ前大統領の遺産をできるだけ取り消そうと躍起になっている。だが、近代化プログラムは熱心に受け入れている。トランプ大統領は国防総省に、核兵器備蓄の見直しを年末までに終えるよう指示している。
トランプ大統領はプーチン大統領との初の電話会談で、オバマ政権下で締結された新STARTを批判し、2021年に失効する同条約を延長するための協議開始をプーチン大統領が提案したところ、それを拒否した、とロイターは2月に報じている。
かつて保有核兵器の強化を支持していた一部の米元高官や議員、軍縮専門家の多くが、今では近代化を推し進めることは重大な危険をもたらすと警鐘を鳴らしている。
実に危険な考え
核兵器のアップグレードは、不信感を和らげ、意図的もしくは偶発的な核戦争のリスクを減らすという新STARTの原理に矛盾すると、彼らは主張する。最新の性能強化によって、米ロの核兵器は破壊力を増し、ますます配備せずにはいられなくなったという。
例を挙げると、米国は戦術兵器として使用可能な「威力を調整できる」爆弾を保有している。
「核戦争を微調整できるという考えは、実に危険な考え方だ」と、米軍備管理協会のキングストン・ライフ氏は指摘する。
同協会幹部の1人で、クリントン政権の国防長官を務めたウィリアム・ペリー氏は、「核戦争により大惨事が起きる危険は現在、冷戦時代よりも高まっている」と述べている。
ペリー氏はロイターに対し、米ロ両国は、核兵器使用の可能性を高めるようなやり方で保有兵器をアップグレードしていると指摘。米国の場合、ほぼ外部の目の届かないところで行われており、「公の場での基本的な議論が何もなされないまま進んでいる」と同氏は語った。