約3億回再生のMVでトランプ政権に抵抗、20歳の米人気歌手カミラ・カベロ──音楽と政治は無関係ではない
「ビルボード ウィメン イン ミュージック 2017」で歌うカミラ・カベロ(11月30日、米ロサンゼルス) Mario Anzuoni-REUTERS
政治を語ることがタブー視されがちな日本の風潮を反映してか、日本の芸能人、特にメジャーなアイドルが政治的な発言をすることは、ほとんどない。他方、米国では、若手も含め人気アーティストらは自らの考えを表明することに積極的だ。移民や難民、イスラム教徒を排斥しようとするドナルド・トランプ大統領に対し、多くの米国のアーティストらが懸念を表明している。その中でも、象徴的な存在と言えるのが、若手人気シンガーソングライター、カミラ・カベロだ。主張がなく無難なものばかりな日本の音楽業界を「当たり前のこと」としている人々にも、カミラの立ち振る舞いに是非、注目してほしい。
トランプ政権に"抵抗"、カミラの明確な意思表示
ガールズユニット「フィフス・ハーモニー」のメンバーであったカミラは、今年に入りソロ活動を開始。同8月にリリースしたシングル「ハバナ」は、イギリスなど世界各国でヒットチャート1位を総なめ、全米でも2位につけ1位獲得も目前であると、大ヒット中。先月末、米国で最も権威のある音楽チャート「ビルボード」が主催、女性アーティストを奨励する「ウィメン・イン・ミュージック2017」では、「Billboard's Breakthrough Artist(最も活躍したアーティスト賞)」を受賞した。
可憐なルックスも注目されるカミラだが「かわいいだけのアイドル」では決してなく、自身の信念を臆することなく発信している。中米キューバの出身であり、6歳の時に母親に連れられてメキシコから米国に渡ってきた移民であるカミラは、自身の出自を隠さず、むしろ誇りに思っていることを度々表明している。トランプ政権の移民や難民、イスラム教徒への弾圧を繰り返し批判し、デモにも参加。さらには、人気DJのゼッドが呼びかけた人権団体「アメリカ自由人権協会(ACLU)」への支援コンサートでも、その歌声を披露した(歌声は01:00から)。
ACLUとは、米国最大の人権団体で、今年1月にトランプ政権がイラクやシリアなどイスラム圏7ヵ国からの米国への入国を、ビザや永住権を持ち、米国内に家庭や職場のある人々まで禁止する大統領令を発令した際に、ACLUはこの大統領令の違法性を連邦裁判所に申し立て。強制送還を一時中止させる裁判所命令を勝ち取るなど、一貫してトランプ政権による人権侵害に抵抗、ノーベル平和賞の有力候補として推薦された団体なのだ。そのACLUを支援するコンサートで、カミラは「RESIST(抵抗)」と大きく書かれたTシャツを着て熱唱。その姿はデイリーメール紙などの各メディアで報じられた。
約3億回再生のMVに込められたメッセージ
今年10月24日に公開され、現在までにYouTubeで3億回以上再生されている「ハバナ」のミュージックビデオにも、カミラのメッセージが込められている。その内容は、短編ドラマのような構成で、家でテレビばかり観ている引きこもりの女の子が、家族に促され外出、映画を観に行き、その帰りでイケメンに出会うというものだが、最後に「この動画をドリーマー達に捧げます」との、字幕メッセージが表示される。