最新記事

自動車

EVとAIで人気のテスラ ささやかれる「自動車製造を甘く見た」ツケ

2017年12月10日(日)17時30分

11月29日、米電気自動車(EV)大手テスラの新型セダン「モデルS」やスポーツ用多目的車(SUV)「モデルX」は、米工場の組立ラインを離れた後、もう1度足止めを食らうのが当たり前だという。製造における欠陥を修正するためだ。写真は同社製の「モデルX」と「モデルS」。シドニーで5月撮影(2017年 ロイター/Jason Reed)

米電気自動車(EV)大手テスラの新型セダン「モデルS」やスポーツ用多目的車(SUV)「モデルX」は、カリフォルニア州フレモント工場の組立ラインを離れた後、もう1度足止めを食らうのが当たり前だという。

製造における欠陥を修正するためだ。

このような欠陥修正を抜きにしては高級車種が出荷できない状況が常態化していることが、同社の現旧従業員9人に対するロイターの取材によって明らかになった。

同社の内部追跡システムによる10月最新データなどによると、組立後の品質検査で「モデルS」と「モデルX」の9割以上に欠陥が見つかることが当たり前となっているという。取材した現旧従業員の一部は、2012年には、すでにこの問題に気が付いていたと語る。

テスラ側は、同社の品質管理プロセスが異例なほど厳格であり、ほんのわずかな欠陥でも発見し、修正することを意図したものだと説明している。組み立て後の欠陥率についてはコメントしなかった。

トヨタ自動車<7203.T>など、世界でも高い効率性で知られる自動車メーカーにおいては、組み立て完了後に欠陥修正が必要となる比率は、製造車両の1割以下にとどまっている、と業界の専門家は語る。修正によって時間と費用の両方が無駄になることから、組立段階において適切な品質を確保することが非常に重要だ、と彼らは口を揃える。

「(テスラでは)組立完了後のやり直しが非常に多く、そこで多大なコストが生じている」と、かつてテスラのスーパーバイザーを務めたことのある人物は語った。

シリコンバレー生まれの自動車メーカーであるテスラは、組立完了後で発見される欠陥の大部分は些細なものであり、ほんの数分で解消できていると話す。

テスラが製造する車は高額ではあるものの、瀟洒(しょうしゃ)なデザインと環境を意識したクリーンテクノロジー、そして画期的な加速性能で消費者を魅了してきた。コンシューマー・リポート誌の調査では、テスラのオーナーの91%が「また買いたい」と答えている。

とはいえ、同誌と市場調査会社JDパワーは、ドアハンドルの欠陥やボディパネルの段差などを理由に、テスラ製自動車の品質について批判を繰り広げてきた。

バーンスタインでアナリストを務めるトニ・サッコナギ氏は今月、テスラの新型セダン「モデル3」の試乗を行い、その適合性や仕上がりについて「比較的悪い」と評価。

テスラ車のオーナーたちも、ウェブ上のフォーラムで、不快な異音やバグの多いソフトウェア、密閉性が低いために内装やトランクに雨水が染みこむといった問題点について、不満を漏らしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げの可能性、物価上昇継続なら「非常に高い」=日

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中