最新記事

米企業

米AT&Tがクリスマス解雇 20万人の従業員全員に1000ドル配れるのに

2017年12月25日(月)18時30分
カルロス・バレステロス

業績見通しは強気で特別ボーナスも配るのに、首切りも進めるスティーブンソンCEO Brendan McDermid-REUTERS

<法人税の大幅減税を祝って気前のいい特別ボーナスを出すと約束した会社が、クリスマス前に解雇通知を出していた>

トランプ米政権による大幅減税を祝って20万人を超える従業員全員に1000ドルずつの特別ボーナスを払うと発表したばかりの米通信大手AT&Tが、同時にリストラを進めていることが報道でわかった。

【参考記事】米AT&T、トランプ減税で「従業員全員に1000ドル」のなぜ?

中西部では、推定600人の従業員が12月16付で解雇通知を受けた。AT&Tが一人1000ドルの特別ボーナスを発表する1週間前のことだ。

AT&Tはシカゴ・トリビューン紙の取材に答えた声明のなかで、今回のリストラは一部事業が時代遅れになったことに対応する「労働力調整」の一部だと以下のように説明した。



技術への投資は効率化を加速させており、わが社でも古い事業の市場は縮小が続いているので、労働力もビジネスの変化に対応できるよう調整する必要がある。関連する従業員の多くには社内の仕事を紹介するし、そうでなくてもできるだけ多くの仕事を見つけられるようにする。

声明が出たのは、AT&Tが傘下の衛星放送会社ディレクTVの機器を家庭に取り付ける従業員700人に解雇通知を出した、とニューヨーク・ポスト紙が報じた数日後。続く12月23日にもポストは「南部9州で熟練技術者215人を解雇」し、来年2月以降にはさらにテキサスとミズーリの両州で700人近い従業員を解雇する予定だと報じた。労働組合の代表者は経営陣に対し怒りを露わにする。

「従業員を解雇しながらどうして1000ドルずつ配ると言ったり、これからは(減税のおかげで)もっと多くの雇用が生み出されるだろうなとと言えるのか。組合員に説明できるよう説明して欲しい。クリスマスだというのに」と、ミズーリ州カンザスシティーの全米通信労働組合のジョセフ・ブランコ会長はテレビで語った。

AT&Tのランダル・スティーブンソンCEOは、税制改革が決まった直後に出した以下の声明で、これからアメリカの経済は成長し、会社の業績も良くなると言って強気だった。



共和党議会は、大統領と共に、法人税を他の先進国に負けないレベルにまで引き下げるという歴史的な一歩を踏み出した。この税制改革は経済成長と雇用創出に役立つだろう。

その矢先に、クリスマスを狙ったようなリストラが必要なのか。

AT&Tはまた、娯楽大手のタイム・ワーナーに買収を仕掛け、11月に米司法省から独禁法違反の疑いで訴えられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米が関係改善望むなら応じる用意、次期政権の出方次第

ワールド

ガザで報道車両に空爆、イスラエルは戦闘員標的と説明

ワールド

台湾総統府、中国との有事想定した初の机上演習

ワールド

イスラエル右派閣僚がアルアクサモスク訪問、ガザ人質
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 2
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシアの都市カザンを自爆攻撃
  • 3
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリスマストイが「誇り高く立っている」と話題
  • 4
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命を…
  • 5
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 6
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 7
    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …
  • 8
    ウクライナ特殊作戦による「ロシア軍幹部の暗殺」に…
  • 9
    中国経済に絶望するのはまだ早い
  • 10
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 7
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 8
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 9
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 10
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中