最新記事

北朝鮮

北朝鮮の消えた政権ナンバー2は処刑されたのか?

2017年12月15日(金)15時00分
ソフィア・ロット・ペルシオ

2014年に韓国で開催されたアジア大会の閉会式に出席する黄炳瑞(写真左) Jason Reed-REUTERS

<金正恩政権のナンバー2と言われた黄炳瑞・軍総政治局長が、この2カ月間公の場から姿を消している。権力闘争の末に粛清されたのではないかという憶測も>

北朝鮮の最高幹部の1人で、金正恩政権のナンバー2と見られていた黄炳瑞(ファン・ビョンソ)軍総政治局長の不在が続いている。韓国メディアなどでは、失脚して処刑されたのではないかという憶測が広がっている。

北朝鮮の軍総政治局長は、軍幹部の思想統一を図り監督する要職。黄は朝鮮労働党中央委員会の政治局常務委員も務めていたが、党から追放されたと言う報道もある。

韓国紙の中央日報は、匿名の政府関係者の話として、黄が収賄罪で党から追放されたと報じている。追放の時期については、明らかになっていない。

黄炳瑞追放の情報は、先月20日に韓国の情報機関、国家情報院が国会の情報委員会に対して行った報告の中で言及された。北朝鮮軍の兵士が軍事境界線を越えて亡命を図ったことを受けて、国家情報院が北朝鮮の最新情勢を説明した。

報告によると、黄は第1副局長ら複数の部下と共に、「不純な」態度を取ったとして処罰された。情報委員会に出席した国会議員は、処罰の内容は機密事項にあたるため詳細は明かせないと語っている。

前任の崔龍海との権力争いか

2015年の聯合通信の報道によると、黄は前の軍総政治局長の崔龍海(チェ・リョンヘ)との権力闘争を経て、実質的に現政権のナンバー2の地位にあるとされていた。

崔は、14年に韓国で開催されたアジア大会に北朝鮮が参加した際、最高幹部の1人として閉会式にも出席していた。しかし同年、軍総政治局長のポストを黄と交替し、翌15年には発電所建設計画で不手際があったとして農場で労働に従事する「教化刑」に処せられた、と報道されている。

今年3月に、黄と崔の間で新たな権力闘争の噂が持ち上がった。韓国の国家情報院によると、今回は崔が優位に立って軍総政治局の査察を実施し、黄を失脚に追い込んだ。聯合通信の報道によると、黄は2カ月前から公の場で姿を見せていない。

黄は15年12月にも、公の場から3週間姿を消したことがあった。しかしこの時は、韓国当局は、黄が中国に持病の脊椎の手術を受けに行っていたと見ている。

北朝鮮は情報統制が厳しく政治情勢は不透明だが、国営メディアは通常、公式行事に出席した政権幹部のリストを公表するため、政権内での序列を推測することができる。今月、国営朝鮮中央通信が、「革命の聖山」とされる北部の白頭山に金正恩が登山したというニュースを伝え、その際に同行した幹部として崔の名前は入っていたが黄の名前はなかった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中