最新記事

健康

エネルギー飲料はむしろ「心と体の健康に悪い」、米研究者が警告

2017年11月27日(月)16時20分
松丸さとみ

エネルギー飲料は心と体に悪い影響が… PaulMoody123-iStock

「1杯のコーヒーの方がずっといい」

ちょっと疲れているかな、とか風邪ひいたかな、という時に、ついエネルギードリンクに頼ってしまうことはないだろうか。健康的なイメージのあるエネルギードリンクだが、実は「短期的な恩恵よりも健康面でのリスクの方が大きい」と警鐘を鳴らす論文がこのほど発表された。オープンアクセスのオンライン学術誌「フロンティア・イン・パブリックヘルス」に公開され、ロサンゼルス・タイムズなどが報じている。

論文は、米ハーバード大学大学院であるハーバードT・H・チャン・スクール・オブ・パブリック・ヘルスのジョゼイマー・マッテイ准教授らによるもの。米国のエネルギードリンク市場を対象に、こうしたドリンクから得られると宣伝されている効果や栄養素の含有量などについて、これまで発表された科学的な根拠に基づく研究などを調べた。

その結果は、エネリギードリンクはむしろ身体的にも精神的にも悪い影響があるというもので、ロサンゼル・タイムズは「どれだけ忙しくても1杯のコーヒーの方がずっといい」と報じている。

心と体に悪い影響が

サイエンス・デイリーによると、今回の論文でエネルギードリンクと関連づけられた健康上の問題には、血圧の上昇や肥満、腎臓障害、疲労、胃痛、虫歯といった身体的なものから、薬物乱用や攻撃性などに見られる「危険をあえて求めるような行動」や、心配性やストレスなどといった精神面での問題がある。これらは、糖分やカフェイン量が高いことに起因しているという。

また論文では、エネルギードリンクをアルコールで割って飲むことも危険だと指摘している。このようにして飲むと、単体で飲むよりも多くのアルコールを飲んでしまう傾向にあるらしい。これは、アルコールからの酔いが自覚しにくくなってしまうからだと考えられている。そのため、脱水やアルコール中毒などのリスクが高まってしまうのだ。

刺激物についての調査は不十分

論文の共著者の1人マッテイ准教授によると、これまでの20年間でエネルギードリンク産業は劇的に成長してきた。その市場規模は米国の場合、現在、年間100億ドル(約1.1兆円)に上るという。エネルギードリンクは通常、エネルギーやスタミナ、運動能力を上げたり、集中力を高めたりするために飲む「健康飲料」というイメージで販売されている。

しかし今回の調査では、健康面に悪い影響があることを示したという。このような飲料に多く含まれているガラナやタウリン、朝鮮人参といった刺激物についてはほとんど知られていない、とマッテイ准教授は指摘する。

また、なかにはレギュラーコーヒーの8倍となるカフェインが含まれている商品もあるが、子供や十代の青年のカフェイン許容量について調べた調査が少ないと論文は指摘している。マッテイ准教授らは今回の結果をもとに、エネルギードリンクのカフェイン含有量の制限や、子供や青年に対するエネルギードリンクの販売制限を提案している。また、将来的には、ガラナなどの刺激物に関してもっと多くの調査が必要だと指摘している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

NATOの「欧州の柱」強化呼びかけ=EU大統領

ワールド

ロシアがウクライナに夜間攻撃、弾道ミサイル投入 米

ワールド

EU、鉄鋼の輸入制限を4月から厳格化 流入量15%

ワールド

米ロ、サウジ会合の結果を分析中 「協議内容公表せず
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取締役会はマスクCEOを辞めさせろ」
  • 4
    「トランプが変えた世界」を30年前に描いていた...あ…
  • 5
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 6
    トランプ批判で入国拒否も?...米空港で広がる「スマ…
  • 7
    「悪循環」中国の飲食店に大倒産時代が到来...デフレ…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 10
    トランプの脅しに屈した「香港大富豪」に中国が激怒.…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 6
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中