最新記事

サウジアラビア

あのサウジアラビアが穏健化を宣言したけれど

2017年11月2日(木)17時20分
クリスティナ・マザ

運転した女性にはむち打ち刑という過去とは決別したが Amena Bakr-REUTERS

<過激派を撲滅して外国投資を呼び込みたい――でも相変わらずの人権侵害で改革の本気度には疑問符が>

テロリストとのつながりや人権抑圧国家のそしりを免れない中東の石油大国サウジアラビア。しかし32歳にして事実上の国家指導者であるムハンマド皇太子が、国内の過激主義を撲滅して「穏健派イスラム」に回帰すると宣言した。

ムハンマドは10月24日、世界各国の有力実業家を集めた経済フォーラムで、最先端技術を生かした人工都市の建設計画を発表するとともに、自らが思い描く新生サウジアラビアについて語った。建国以来、この国は厳格なイスラム復古主義を取るスンニ派の一派、ワッハーブ派の絶対王政により統治されてきた。彼は時期を待たず、保守的なサウジアラビアを速やかに現代的な国へ変貌させたいという。

「過激主義との闘いでこれからの30年を無駄遣いしない。今すぐに撲滅する」と、ムハンマドは断言する。「私たちはこの国の宗教と伝統が寛容につながるような、普通の人生を歩みたい。世界の国々と共存して世界の発展の一翼を担えるように」

この発言は、石油産業に依存しない「脱石油時代」に備え、経済を多様化させながら外国と新たな協調関係を結ぶという構想の中で語られた。その目的を達成する上で、現代的で穏健な国というイメージは役に立つと専門家らは指摘する。

「混迷と紛争に満ちた地域で、サウジアラビアは多くの難題に直面している。経済改革には社会改革が伴わなければ十分ではない」と、中東問題研究所(ワシントン)のイブラヒム・アル・アッシルは言う。

反体制派の逮捕は続く

アルカイダやISIS(自称イスラム国)のような過激派テロ組織は、ワッハーブ主義に触発されている。サウジアラビアはワッハーブ主義を輸出して、こうした急進勢力の台頭を促進したと非難されてきた。今回のムハンマドの発言は、そんな状況を変えたいという強いメッセージだ。

政府は最近、女性に自動車の運転を認めることを発表。国営石油会社を上場して民間投資家に一部開放することも明らかにした。欧米諸国に好印象を与え、外国から駐在員や投資家を呼び寄せるためだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

IEA、今年の石油需要見通し下方修正 貿易摩擦で

ビジネス

ユーロ圏の銀行、企業向け融資を厳格化 経済見通し懸

ワールド

韓国、対米交渉で関税の発動先送り目指す 造船などで

ワールド

豪政府がインドネシアに照会、「ロシアが軍用機駐留要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトランプ関税ではなく、習近平の「失策」
  • 3
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができているのは「米国でなく中国」である理由
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 6
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 7
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 8
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 9
    シャーロット王女と「親友」の絶妙な距離感が話題に.…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 10
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中