最新記事

ドイツ

独メルケルの4期目続投に暗雲 連立協議決裂で再度選挙の可能性

2017年11月20日(月)12時27分

11月19日、ドイツのメルケル首相(写真右)が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)、自由民主党(FDP)、緑の党による連立協議が19日、決裂した。親ビジネスのFDPが妥協できない意見の相違を理由に協議から撤退した。写真はベルリンで19日撮影(2017年 ロイター/Axel Schmidt)

ドイツのメルケル首相が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)、自由民主党(FDP)、緑の党による連立協議が19日、決裂した。企業寄りのFDPが、妥協できない意見の相違を理由に協議から撤退した。

これにより、メルケル首相が緑の党と少数与党政権の樹立を目指すか、新たな選挙が実施されることになる。

FDPは、移民・難民や環境など主要な政策で妥協点を見いだせなかったと主張。リントナー党首は記者団に「今日の協議は進展しなかったどころか、むしろ後退した。妥協を探っていた点について疑問が呈されたからだ」と述べた。「不誠実に政権参加するなら、しないほうがましだ」と強調した。

再選挙となれば9月の選挙で国政に初進出した極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」がさらに得票率を伸ばす可能性もあるため、CDU・CSUなどはこれを回避したい考え。

欧州最大の経済大国ドイツでの政治空白は、ユーロ圏改革や欧州連合(EU)の対ロシアなど外交政策に影響が及ぶ可能性がある。

メルケル首相は20日、シュタインマイヤー大統領に会い、緑の党と自由民主党(FDP)との連立政権を樹立できなかったと伝える、と表明した。

また、主な障害は移民問題だったとした。

大統領は新たな選挙を求める権限を有しており、メルケル首相が大統領との面会を決めたことは、FDPが連立協議から撤退したのを受け、同首相が緑の党と少数与党政権の樹立を目指さない可能性を示唆する。

メルケル首相は記者団に対し「首相として、今後の困難な数週間にこの国がうまく運営されるようにするために何でもやる」と述べた。

少数与党政権の樹立や再選挙は、第2次世界大戦後、前例がない。

連立協議決裂を受けて、ユーロは対円で2カ月ぶりの安値に下落した。

3党は4週間以上にわたって、連立協議を進めてきた。

CDU・CSUは、ドイツが受け入れる難民の数に年間の上限数を設ける方針を示していたが、緑の党がこれに反対。

FDPのリントナー党首は、安定した政権を4年間継続するための十分な信頼関係が3党の間で築けなかったとコメントした。

ドイツ商工会議所(DIHK)のエリック・シュバイツァー会長は「国の将来を左右する重大問題への対応が長期にわたって遅れる恐れがある」と指摘。「ドイツ企業は不透明感が長期化するリスクに備えるべきだ」との見方を示した。

[ベルリン 20日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中