北朝鮮危機「アメリカには安倍晋三が必要だ」
安倍はアメリカにとって理想の指導者で過去数十年で最も有能な首相? Kevin Lamarque-REUTERS
<衆院解散前、束の間「希望の党」が躍進しそうに見えた刹那、アメリカにとっていかに安倍晋三が貴重か気づいた、と筆者は書く>
10月22日の日本の総選挙は、アメリカ人があまり意識したことのない真実をあぶり出した。アメリカとドナルド・トランプ米大統領が北朝鮮や中国に対抗するためには、日本の安倍晋三首相が必要だ、ということだ。
カリスマ性のある東京都知事・小池百合子が「打倒・安倍政権」をキャッチフレーズに「希望の党」を立ち上げた後、束の間とはいえ安倍の自由民主党が不利に思えた時期があった。日本が、過去数十年で最も有能な首相を失いそうに見えたのだ。さらに悪いことに、小池は総理の座を目指さないと明言し、万一安倍が敗れたら、誰が次期首相になるのかさえわからない状態だった。
重大な事実が明らかになったのはその時だ。アメリカは、北朝鮮の核・ミサイル問題や中国の拡張主義はもちろん、テロや自然災害まで、東アジアの安全保障上の脅威に対処する上で、安倍という強力なパートナーに頼ることにいつの間にか慣れ切っていたのだ。
これらの大きな脅威に、アメリカは一国で立ち向かうことはできない。勝利のためには、前進基地を作り同盟国からの支援を受けることが不可欠だ。日本はその両方をしている。日本には世界中のどの地域よりも多い5万人近い米兵が駐留しているのだ。
在日米軍には、米第七艦隊、その空母打撃群、海兵隊第3遠征軍、そして戦闘航空団を含む相当規模の空軍が含まれる。日本政府は、これだけの部隊を維持するための「在日米軍駐留経費」も年間約20億ドル負担している。
過去にない緊密さ
安倍がアメリカの戦略目標の強い支持者で、常に日本の経済的・外交的な影響力を割いて協力してくれることも重要だ。日本の自衛隊と米軍との相互運用もうまくいっている。
日米同盟に反対する声はいずれの国にも少ないが、安倍はそのつながりを前例がないレベルまで強化した。新たな法律や政治の枠組みを作ることで、安全保障で日本がより積極的な役割を担えるようにした。
2012年に首相に就任して以降のわずか5年で国家安全保障戦略を作り、武器輸出3原則を緩和し、10年間減り続けていた防衛予算を増やした。海洋における国際法遵守を積極的に訴え、オーストラリア、インド、ベトナム、フィリピンなどと安全保障協力の関係を築いた。日米同盟の関係において、自衛隊の役割と機能も拡大した。
さらに、日本国憲法の解釈を変更して自衛隊が集団的自衛権を行使できるようにした。これによって日本は、地域覇権を狙う中国を牽制する位置づけになり、有事の際には重要な役割を果たすことができるようになった。また安倍は前任者たちと違い、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設先を県外や国外にするのではなく、同じ沖縄県の名護市辺野古に新基地を建設することを強く支持してきた。