急成長の中国航空産業で不正部品疑惑 米国にも波紋
不正疑惑を告発した元ムーグ社員のCharles Shi氏。上海で8月撮影(2017年 ロイター)
中国の航空機部品サプライヤーが、米飛行制御装置メーカー「ムーグ」に対して製造過程に不備のある部品を納品し、関連書類を偽造してムーグが認証していない工場に下請けを依頼していたと、米連邦航空局(FAA)の内部報告書が指摘していた。
ロイターが情報公開制度を利用して入手した2016年11月4日付の内部報告書は全9ページ。FAAはこの中で、影響がある部品273個が、米航空機大手ボーイングの旅客機777型機の翼の、スポイラーと呼ばれる着陸時の減速装置に装着されていると指摘した。装着されている機体数は明示されていなかった。
内部報告書は、問題の部品の名称や、装着された時期を特定していない。FAAとボーイング、ムーグは報告書の中で、航空機の安全性には影響はないとしていた。ロイターの問い合わせにも、メールで同様の回答を寄せた。
ムーグは、商用機と軍用機のフライト・コントロール・システムのサプライヤー。航空機業界では、航空機の安全のために重要な部品供給のトレーサビリティーや部品の品質は、厳しく管理されている。
今回の件で、直ちに安全性の問題が提起されるわけではない。
だが、世界最速で成長する航空産業を抱える中国が、外国の製造業者への依存を減らそうとするなかで、同国のサプライヤーや規制当局にかかっているプレッシャーの大きさを示している。
もちろん、これは中国だけの問題ではない。
日本の神戸製鋼所<5406.T>の株価は先週、大規模なデータ不正が明らかになり急落した。同社は、航空機や自動車に使われるアルミニウムや銅製品を供給しており、顧客は製品の安全確認に追われた。
急成長中の中国の航空宇宙産業は、競争の激しい世界市場に部品をより早く安価に供給することを狙っており、サプライヤーから引き合いが絶えない状態だ。米国の貿易統計によると、米国の航空宇宙産業への中国からの部品輸出は、2009年の約3倍の年間約12億ドル(約1350億円)になっている。
需要拡大により、それまで国有企業が主体だった航空機部品業界で、より小規模な部品メーカーの設立が加速している。