最新記事

独裁

北朝鮮の金正恩が愛する実妹ヨジョン 党中枢部入りが意味するもの

2017年10月11日(水)18時40分

10月9日、北朝鮮の最高指導者・金正恩氏(左)が、実妹の金与正氏(右)を、最高意思決定機関メンバーに抜擢。自身にとって最も重要な人物を政権中枢に置くことにより、正恩氏が権力固めをする狙いがあると、専門家や当局者らは指摘する。平壌で4月撮影(2017年 ロイター/Damir Sagolj)

北朝鮮の最高指導者・金正恩(キム・ジョンウン)氏が、実妹の金与正(ヨジョン)氏を、最高意思決定機関メンバーに抜擢。自身にとって最も重要な人物を政権中枢に置くことにより、正恩氏が権力固めをする狙いがあると、専門家や当局者らは指摘する。

朝鮮労働党の中央委員会総会で28歳の与正氏が政治局員候補に選出されたと、北朝鮮の国営メディアは8日伝えた。不透明だが全権力を握る政治局は、最重要の国政問題を決定する機関である。

北朝鮮のような男性社会で政治局入りを果たした女性は、正恩氏の父、故金正日(ジョンイル)総書記によって強力な役割を与えられた正日氏の妹、金慶喜(ギョンヒ)氏に次いで2人目だ。

「(与正氏は)女性であるため、金正恩氏は自身の指導者としての立場を揺るがす脅威、もしくは挑戦相手とは見なしていないようだ」と、韓国情報機関、国家情報院(NIS)傘下の国家安保戦略研究所(INSS)のリサーチフェローMoon Hong-sik氏は指摘する。

「『血は水よりも濃い』ということわざがあるように、正恩氏は与正氏を信頼できると考えている」

おばの慶喜氏の場合は朝鮮労働党に入党後30年以上を経て2012年に政治局入りしたが、与正氏は前例のない早さで出世している。

慶喜氏は、政権ナンバー2だった夫の張成沢(チャン・ソンテク)氏が2013年に処刑されてから、公の場に姿を見せていない。慶喜氏は、原因不明の病気療養のため、首都平壌近くに隔離されていると、韓国の情報機関は8月、議会に説明している。

正恩氏の支持を失った親戚は、張成沢氏と妻の慶喜氏のほかにもいる。

正恩氏の異母兄、金正男(ジョンナム)氏は2月、マレーシアの空港で、有毒な神経ガスによって殺害された。殺人容疑で実行犯の女2人の裁判が行われているが、事件の背後には正恩政権が関与していると米韓当局者はみている。

一部の韓国議員によると、マカオで生活していた金正男氏は一族による世襲制を批判し、弟が自身の処刑を命じていたと語っていたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

為替円安、今の段階では「マイナス面が懸念される」=

ワールド

中国、台湾総統就任式への日本議員出席に抗議

ビジネス

米天然ガス大手チェサピーク、人員削減開始 石油資産

ビジネス

投入財の供給網改善傾向が停滞、新たな指数を基に米N
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 7

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 8

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中