最新記事

独総選挙

ドイツ総選挙でトルコ系住民はエルドアンに従うか

2017年9月23日(土)12時20分
ベサニー・アレン・イブラヒミアン

国民投票の結果を速報で知り、ベルリン市内で改憲を祝うトルコ系の人々(4月) Fabrizio Bensch-REUTERS

<24日の総選挙でトルコの露骨な介入で票が動けば、メルケルの移民政策に批判が集中する恐れも>

9月24日に行われるドイツの総選挙に露骨な介入を試みたトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領。その強引さにはドイツ人もあきれるのみだ。

エルドアンは8月、アンゲラ・メルケル首相率いる与党・キリスト教民主同盟(CDU)と連立相手の社会民主党(SPD)、そして野党の緑の党を「トルコの敵」と決め付け、トルコ系ドイツ人にこの3党に投票するなと呼び掛けた。

ドイツにいるトルコ系有権者は約100万人。このグループに的を絞った世論調査は最近行われていないため、エルドアンの呼び掛けがどの程度選挙結果に影響を及ぼすかは未知数だ。

結果次第ではドイツ社会に「統合」されたはずの移民が祖国の強権指導者に従ったことになり、メルケルの移民政策にますます批判が集中しかねない。

伝統的にトルコ系ドイツ人の圧倒的な支持をつかんできたのは中道左派のSPDだ。トルコ系の多くは、西ドイツ政府が労働力不足を解消するため「ゲストワーカー」として移民を受け入れた60~70年代に流入した人々とその子孫。労働者の権利擁護とイスラム系移民に寛容な政策を掲げるSPDの支持率は約70%と高い。一方、トルコのEU加盟に反対し続けてきたCDUを支持する人は、トルコ系有権者の6%前後にすぎない。

ドイツとトルコは共にNATOの加盟国で、本来は協力関係にある。だが昨年7月に起きたトルコのクーデター未遂事件で、関与した軍人の引き渡しをドイツが拒否したため、関係が悪化した。

さらに今年4月、トルコで大統領権限の強化などを盛り込んだ憲法改正案が国民投票に付されることになり、エルドアン率いる公正発展党(AKP)の関連団体がドイツ国内でトルコ系向けに改憲支持キャンペーンを展開しようとした。ドイツ政府がこれを禁止すると、怒ったエルドアンはメルケルを「ファシスト」呼ばわりし、険悪ムードは一気にエスカレートした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米信用スプレッド、24年9月以来の高水準 景気後退

ワールド

ウクライナ、ロシア国内の足場喪失目前 クルスク州一

ビジネス

FRB利下げ、6月再開との観測高まる CPI伸び鈍

ビジネス

米CPI、2月前年比+2.8%・前月比+0.2% 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 3
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「腸の不調」の原因とは?
  • 4
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 5
    スイスで「駅弁」が完売! 欧州で日常になった日本食、…
  • 6
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 7
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 8
    トランプ=マスク独裁は許さない── 米政界左派の重鎮…
  • 9
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 10
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 4
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 5
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 10
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中