最新記事

インドネシア

「次の次のインドネシア大統領」が語るイスラム急進化の真実

2017年8月18日(金)16時10分
長岡義博(本誌編集長)

7月に来日したインドネシアのアニス・バスウェダン前教育文化相 Newsweek Japan

<今年4月のジャカルタ知事選で勝利した、前教育文化相のアニス・バスウェダン。インドネシア政界の期待の星が、民主体制下で懸念されるイスラム急進化について語った>

世界最大のイスラム教人口を有するインドネシアは、かつては軍人出身の大統領が君臨する開発独裁国家だった。30年間続いたその体制が97年のアジア通貨危機をきっかけに崩壊し、民主化が始まってまもなく20年。以来、順調な経済成長と民主主義の成熟を謳歌しているが、その一方で懸念されているのがイスラム急進化だ。

今年4月に行われた首都ジャカルタ特別州知事選では、イスラム急進主義団体のイスラム防衛戦線(FPI)が「イスラム教を冒涜した」と中国系でキリスト教徒のバスキ・チャハヤ・プルナマ(通称アホック)州知事に大規模デモを仕掛け、落選に追い込んだ。この選挙で当選したのが、ジョコ大統領の下で教育文化相を務めたアニス・バスウェダンだ。

政治学者出身のアニスは「次の次の大統領」とも言われるインドネシア政界の期待の星でもある。ただ選挙でイスラム票を取り込むためイスラム教徒であること、そしてFPIとの親密さをアピールしたことから、イスラム急進化の象徴とも受け止められている。

16年1月にはジャカルタでISIS(自称イスラム国)を名乗るテロが発生。シリアやイラクからの「帰還兵」流入も懸念される。「寛容と多様性」を誇ってきたこの国はどこへ向かうのか。10月の正式就任を前に、笹川平和財団の招へいで7月に来日したアニスに本誌を含む日本人記者団がインタビューした。

【参考記事】インドネシア大統領も「超法規的殺人」を指示

***


――ジャカルタではイスラム教徒とバスキ現知事支持層の分断が深刻だ。知事就任後はバスキの政策を継続するのか。

ジョコ大統領は12年にジャカルタ州知事に当選した後、14年に大統領になった。彼は(州知事として)2年働き、その後バスキが州知事を引き継いだのだが、MRT(ジャカルタ都市高速鉄道)など多くのプロジェクトはそのずっと前から始動していた。どれほど昔か分からないほどだ。

私はかなり早い段階から、プロジェクトは継続すると言っている。学者なので今後も客観的であり続ける。たとえば河川の浄化事業はファウジ・ボウォ知事(07~12年)、スティヨソ知事(97~07年)の時代に提案された。それをジョコがスタートし、アホックの時代に結果が出た。最後の知事がすべての評価を得るわけだ。そのことはしばしば見過ごされているが、以前に始まったプロジェクトは継続する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中