最新記事

南シナ海

中国、シンガポールに圧力 南シナ海問題でASEANの軟化狙う

2017年8月14日(月)18時07分

8月8日、中国は、南シナ海での自国の行動に対する批判の再燃を恐れ、それが現実とならないようシンガポールに圧力をかけているという。写真は6日、マニラで会談する中国の王毅外相(右)とシンガポールのバラクリシュナン外相(2017年 ロイター/Erik De Castro)

来年、東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国がシンガポールに替わる。関係筋によると、中国は、南シナ海での自国の行動に対する批判の再燃を恐れ、それが現実とならないようシンガポールに圧力をかけているという。

この数ヶ月間、複数回にわたる非公式の会談で、中国側の代表者はシンガポール側に対し、1年交代のASEAN議長国にシンガポールが就任しても中国政府にとって困難が生じないよう申し入れたという。

外交関係者らは、中国がこれまでにも、アジアにおける最大の不安定要因の1つである南シナ海問題に対するASEANの姿勢軟化を狙って、ASEAN議長国に影響力を行使してきたとみている。

現在の議長国はフィリピンで、先週末にはマニラで外相会議が開催された。慣例となっている共同声明は土曜日(5日)には発表されず、最終的に日曜日までずれ込んだ。外交関係者らによれば、領有権が争われている海域に構築した人工島で中国が防衛力を急速に拡張していることについて、間接的な言及を盛り込むか否か、意見がまとまらなかったためだという。

事情に詳しい北京駐在のあるアジアの国の外交官は、シンガポールがASEAN議長国の立場を利用して南シナ海問題の「国際化」を狙うことについて懸念が出ているという。中国は、南シナ海問題を直接の当事国間の問題に限定したい考えだ。

「華人系住民の多いシンガポールはもっと中国政府の意向を尊重すべきだというのが中国の考えだ」と、この外交官は匿名を条件にロイターに語った。

南シナ海情勢に詳しい香港駐在のアジアの別の国の外交官は、「中国政府は、南シナ海問題に関して何を期待しているか、シンガポールに明示している」と言う。

本記事についてシンガポールの外務省にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

中国外務省は、中国はシンガポールの取り組みを支持し、「シンガポールが、ASEANを主導して中国と協力することで、現実的な協力関係の強化と改善を推進し、運命共同体である中国・ASEANコミュニティの連携をいっそう確かなものにすると確信している」との回答をロイターに寄せた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、EUに凍結ロシア資産活用の融資承認を改

ワールド

米韓軍事演習は「武力」による北朝鮮抑止が狙い=KC

ワールド

米ウ代表団、今週会合 和平の枠組み取りまとめ=ゼレ

ワールド

ローマ教皇、世界の紛争多発憂慮し平和訴え 初外遊先
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 9
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 10
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中