朝鮮戦争休戦から64年 北のミサイル実験も日常となった韓国の悪夢
7月26日、休戦から64年を27日に迎えた朝鮮戦争で休戦協定が協議された板門店への玄関口である韓国最北端の坡州市では、北朝鮮による大陸間弾道ミサイルの発射実験で高まっている緊張などみじんも感じられない。写真は、自分で造った地下シェルターを案内するWoo Jong-ilさん。同市で14日撮影(2017年 ロイター/Kim Hong-Ji)
韓国の首都ソウルから車で北に30分ほど有刺鉄線沿いの幹線道路を走ると、サッカースタジアム数個分の広さを擁するショッピングモールが2つある。その目と鼻の先にあるのは、南北朝鮮を隔てる世界有数の軍事境界線だ。
モールは北朝鮮との非武装地帯(DMZ)に接する韓国最北端の坡州市にある。ここは、27日に休戦から64年を迎えた朝鮮戦争(1950─53年)で休戦協定が協議された板門店への玄関口だ。当時はまだ言葉を交わしていた両国だが、最近では口も利かなくなった。
「坡州でおとぎ話が現実に」と韓国観光公社の広告はうたっている。だが朝鮮戦争のさなか、同市では最も激しい戦闘が行われ、それはまさに悪夢としか言いようのないものだった。ここには、韓国で唯一の「敵の墓地」があり、中国と北朝鮮の兵士が眠っている。
今となっては、ほとんど忘れられたも同然の歴史である。ロッテ・プレミアムアウトレットの屋上からは、子ども連れの家族が、臨津江の向こう側の北朝鮮を双眼鏡で見ることができる。このモールにはメリーゴーラウンドや映画館、ミニ鉄道もある。
一方、新世界百貨店<004170.KS>が経営する坡州プレミアムアウトレットでは、うだるように暑い7月のある日、施設内の噴水の周りで大勢の子どもたちがはしゃぎ回っていた。ここから数キロ離れた場所に、人気観光地の南仏プロバンスをモデルに造られた村「プロバンスマウル」があり、絵本に出てくるようなレストランやパン屋、衣料品店が建ち並ぶ。
また、市内には他にも、子どもが美術館で木彫りのピノキオ人形を作ったり、大人が農園で野生のブドウから作られたワインを試飲したりできる場所もある。
北朝鮮が、米国の独立記念日である7月4日に大陸間弾道ミサイルの発射実験を実施して以来、高まっている緊張など、ここ坡州市では、みじんも感じられない。同ミサイル実験を受け、米韓は同市付近の上空で合同軍事演習を行った。