最新記事

中東

アメリカと組むサウジ、血塗られたテロ犠牲の歴史

2017年6月26日(月)18時30分
トム・ポーター

イスラム教徒の聖地メッカの大モスクを訪れた巡礼者たち(2014年10月6日) Muhammad Hamed-REUTERS

<サウジアラビアはよくテロ支援で非難されるが、当のサウジアラビアもテロ攻撃の犠牲と無縁ではない>

サウジアラビア治安当局は23日、イスラム教最大の聖地メッカにある大モスクで計画された自爆テロを、未然に阻止したと発表した。建物に立てこもった容疑者の男は治安部隊に包囲され、自爆したという。

サウジアラビアは、テロを支援しているとして批判を浴びてきた。2001年9月11日に起きた米同時多発テロのハイジャック犯19人のうち15人はサウジ国籍だった。サウジアラビアが国教とする超保守的なイスラム教ワッハーブ派と、テロ組織ISIS(自称イスラム国)のイデオロギーが似ているという指摘もある。

【参考記事】本当の危機は断交ではなく、ISを利する民衆感情の悪化【サウジ・イラン断交(後編)】

当のサウジアラビアもテロ攻撃の犠牲と無縁ではない。王家のサウド家は欧米諸国と共謀していると、イスラム過激派から繰り返し非難されてきた。

サウジ国内で起きた初の大規模なテロ攻撃は、1979年のメッカ大モスク占拠事件だ。聖地メッカを訪れる年に1度の大巡礼ハッジが行われていた最中に、欧米化に反対した武装勢力が大モスクを一時占拠した。2週間続いた占拠で数百人の犠牲者を出し、最後はパキスタンとフランスの特殊部隊が制圧した。実行犯たちは公開処刑された。

サウド家を敵視するアルカイダ

湾岸戦争中、国際テロ組織アルカイダの創設者ウサマ・ビン・ラデンはイスラム教徒に対して、サウジアラビアで米軍駐留を認めたサウド家を打倒せよと呼び掛け、1994年にサウジ国籍を剥奪された。

【参考記事】死と隣り合わせの「暴走ドリフト」がサウジで大流行

それ以降、イスラム教過激派の武装勢力がテロの標的にしたのは、欧米人やサウジアラビアの治安部隊、宗教的少数派だ。

1996年にはサウジ東部ダーランの米軍基地で爆弾テロがあり、19人が死亡、300人以上が負傷した。

2001年に首都リヤドで起きた連続爆発では、イギリス人とアメリカ人が犠牲になった。事件後に逮捕されたイギリス人労働者のロン・ジョーンズは、サウジの治安当局に拷問され、自白を強要されたと主張。ジョーンズは後に自白の撤回を許され、保釈された。

外国人を狙ったテロはその後も続いた。2003年にリヤドの外国人居住区で起きた自爆テロで35人が死亡し、数百人が負傷した。その数週間後には、サウジアラビアの海軍基地があるジュベイルで、アメリカ人が射殺された。事件を受けて、欧米出身の外国人労働者は一斉に国外退去した。

同年11月にリヤド西部の外国人居住区で起きた自爆テロは、犠牲者の大半が地元住人で、17人が死亡した。

【参考記事】国交断絶、小国カタールがここまで目の敵にされる真の理由

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港、民主活動家ら6人指名手配 懸賞金も

ワールド

略奪でガザの食料供給機能不全、イスラエルの対策言明

ワールド

イラン、ワッツアップなどの禁止解除 ネット規制緩和

ワールド

アメリカン航空が米国で全便運航停止、約1時間後に解
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシアの都市カザンを自爆攻撃
  • 3
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリスマストイが「誇り高く立っている」と話題
  • 4
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 5
    「自由に生きたかった」アルミ缶を売り、生計を立て…
  • 6
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 7
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 8
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 9
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 10
    日本製鉄、USスチール買収案でバイデン大統領が「不…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 5
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 6
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 7
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 8
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 10
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中