最新記事

中東

イランがズンバ(ZUMBA)を禁止--リズミカルな動きは非イスラム的

2017年6月20日(火)16時00分
ジャック・ムーア

イランにも中間層が台頭しつつあるのに政治は古いまま REUTERS/TIMA

<イランで人気だったダンス、ズンバが禁止された。イスラム法に基づく統治は、台頭する中間層の実態とますますかけ離れてきている>

イラン政府は6月に入り、フィットネスに人気のダンス「ズンバ(ZUMBA)」を禁止した。イランの健康マニアたちは、この決定の背後にいるイスラム法学者などイランの宗教・政治エリートに対する怒りを募らせている。エリートたちは、イランで増加しつつある中間層の実態とますますかけ離れつつある、と。

健康的なライフスタイルを推進するイランの団体「スポーツ・フォー・オール連盟」の事務局長アリ・マジダラによれば、ラテンアメリカが発祥のズンバは、イスラム的な価値観に反しているという。

(ズンバは「イスラム的な価値観に反する」としてイランが禁止した)


女性ランナーがいないマラソン大会

マジダラは、青少年スポーツ省に宛てた公開書簡の中でこう述べている。「ズンバをはじめとするリズミカルな動きやダンスは、いかなる種類であれ、形式を問わず合法的ではない。よって、そういった活動の禁止を求める」

イランのエリート層はこれまでも、自分たちが罪深いと考える日常的な活動を頻繁に禁止してきた。2017年前半にイラン当局が禁止したほかのものを紹介しよう。

■ライブ討論会

イランの選挙管理委員会は4月、ライブ討論会を禁止した。これは5月の大統領選に向けた措置で、討論会は事前に収録されたものを放送することになった。候補者は、「国のイメージを損なう」ような発言をしないよう事前に指示される。2期目の再選を果たした穏健派のロウハニや他の候補者からも批判があった。

■マラソン

テヘランでは4月に初の国際マラソン大会が開催され、数百名が出場した。だが目を引いたのは、女性ランナーが1人もいなかったことだ。規定で、女性が参加できるのは10km走のみ。それも、男性の観客がいないスタジアム内で行われる場合に限られている。イランには、男女が一緒にマラソンを走ることを禁じた法律はないが、青少年スポーツ省は事実上、男女混合レースを認めていない。

■ビリヤードとチェス

イランの青少年スポーツ省は3月、5人の女性ビリヤードプレイヤーに対して、国内外での1年間のプレイ禁止を言い渡した。イランのビリヤード・ボーリング連盟は、5人の女性プレイヤーが中国オープンに出場するために中国を訪れた際に、「イスラム教の原則」に反する行為を行ったと発表したが、詳しい説明はなかった。

イランの女性はスポーツを行う際、イスラム教徒が身につけるヒジャブなどを常時着用しなければならない。

2月には、チェスのナショナルチームが18歳のイラン人女性プレイヤーに対し、ナショナルチームへの参加と国内のチェストーナメントへの出場を禁じた。ジブラルタルで開催されたトーナメントでヘッドスカーフの着用を拒否したためだという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ、6月の英販売台数は前年比12%増=調査

ワールド

豪家計支出、5月は前月比+0.9% 消費回復

ワールド

常に必要な連絡体制を保持し協議進める=参院選中の日

ワールド

中国、太平洋島しょ地域で基地建設望まず 在フィジー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中