マルタ疑惑 地中海に浮かぶ小国がヨーロッパの脱税天国に?
Darrin Zammit Lupi-REUTERS
<地中海の美しい島マルタ島が、オンラインギャンブルのマネーロンダリングの巣窟になっているという内部告発がおこなわれた>
地中海、イタリアのシチリア島の南に浮かぶ人口43万人程度のマルタ共和国は、世界で最も小さい国の1つだ。英連邦とEUの一員でもある。「マルタ島」の名称の方が馴染み深いかもしれない。アメリカのミステリー作家ダシール・ハメットの小説で、ボギーことハンフリー・ボガートが主演した映画『マルタの鷹』(1941)の舞台として知られるほか、その美しい街並みとビーチで人気の観光地となっている。
だが、マルタにはもう一つの顔がある。それは、EUきってのタックス・ヘイブン(低課税地域)であるために外国企業を魅了し続け、とくにオンラインゲーミング産業においては世界的中心地であるということだ。その歳入は同国GDPの12%にのぼるという。
内部告発でずさんな管理が明るみに
オンラインゲーミング産業とはつまり、オンラインカジノ等でギャンブルを行うオンライン賭博のことだ。2015年には全世界で380億ドルの歳入がある。
合法的に運営するには、オンライン賭博が合法である国が発行するライセンスが必要で、マルタは2015年の時点で世界各国の企業に約500のライセンスを発行している。そのほとんどはヨーロッパの企業だ。マルタでライセンスが発行されると、マルタベースのサーバーを通してEU28か国での操業が可能となる。
ライセンス申請者の信憑性を調べ、また脱税やマネー・ロンダリング(資金洗浄)などの違法行為がないかを監視するのがマルタ・ゲーミング・オーソリティー(MGA)だが、このほど内部告発により、MGAが少なくとも2012年から14年のあいだ、サーバーのモニタリングを行わずに操業を許していたことが明るみに出た(5月26日、ロイター)。ただし、今のところは実際に違法行為があったかどうかの確認はとれていない。
MGAでは賭博サイトに使われるコンピュータサーバーにIDつきのステッカーをつける「シーリング」という方法でモニタリングをしている。IDはMGAに登録されたものと同じでなければならない。内部操作はできないが、MGAは各社がオンライン取引にどのハードウェアを使っているかを知ることができる。同社の元社員でITエキスパートであるブルガリア人のヴァレリー・アタナソフは、モニタリングの過程で10数社で不審な行為を発見し、そのたびに上司に報告したが、告発は却下されるばかりだった。
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違反行為が確認された会社の一つに、スウェーデンの大手ベットソンがある。ドイツで人気のオンラインゲームサイトで、ページを見ると、ギャンブル好きで知られる元ドイツナショナルチームのサッカー選手であるマリオ・バスラーが広告塔として登場し、同サイトへの登録を誘いかけている。スポーツ賭博のほか、ライブ・カジノ、ポーカーなどもある。全世界で約1800万人が同サイトで日常的にポーカーに興じているという。