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南シナ海海自の最新鋭艦「いずも」 ASEAN10カ国の士官乗せ南シナ海航行
6月19日、海上自衛隊の最新鋭艦「いずも」は、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の士官を乗せて南シナ海を航行する。日本は中国が軍事拠点化を進める南シナ海への関与を強める方針で、艦上で勉強会を開き、この海域で起きている情勢の認識や国際法を順守することの重要性をASEAN各国と共有したい考え。写真は最新鋭艦「いずも」。昨年12月横須賀で撮影(2017年 ロイター/Kim Kyung Hoon)
海上自衛隊の最新鋭艦「いずも」は19日から、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の士官を乗せて南シナ海を航行する。日本は中国が軍事拠点化を進める南シナ海への関与を強める方針で、艦上で勉強会を開き、この海域で起きている情勢の認識や国際法を順守することの重要性をASEAN各国と共有したい考え。
防衛省の発表によると、いずもは19日にシンガポールを離れ、23日まで周辺海域を航行する。南シナ海の一部を巡って中国と領有権を争うフィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイだけでなく、対中関係を重視するカンボジアやラオスも含め、ASEAN全加盟国の若手士官を招待した。
中国が南シナ海のほぼ全域の領有権を主張し、南沙諸島などの岩礁を埋め立てて軍事基地を造成している現状に対し、ASEAN内では意見が一致していない。ASEANは全加盟国が共同歩調を取るのが原則で、国際会議で非難声明を出せないことがたびたび起きている。
「ラオスやカンボジアも含めたすべての国に、今起きていることを理解してもらうのが大切だ」と、防衛省関係者は今回の航海の狙いを説明する。艦上で海洋法や人道支援、災害救援の勉強会を開くほか、いずもの乗員が訓練する様子を各国の士官が見学する。
ヘリコプター空母のいずもは、2015年3月に就役した海自最大の護衛艦。5月から約3カ月にわたって南シナ海とインド洋を航行し、シンガポールやフィリピン、ベトナム、スリランカに寄港するほか、米国やオーストラリア、カナダなどの海軍と共同訓練を行っている。7月中旬には米国、インドとの共同訓練「マラバール」にも参加を予定している。
南シナ海への関与を強める日本は、ASEANとの関係強化を進めている。15日にはフィリピンやインドネシアなど5カ国の国防当局者を幕張(千葉市)に集めて防衛装備輸出に関する会議を開催した。20日から自衛隊が国内で行う大規模災害演習にも、ASEAN10カ国の士官を招待する。
(久保信博、ティム・ケリー 編集:田巻一彦)