ジャカルタで圧力鍋使用の自爆テロ 不安と衝撃の中で断食月近づく
テロの連鎖を厳重警戒
国家警察幹部は25日、今回の自爆テロが22日に英マンチェスターで発生した爆弾テロ事件やフィリピン南部ミンダナオ島でフィリピンのイスラム過激組織「マウテグループ」が国軍と戦闘状態に陥った(ドゥテルテ大統領が同島周辺地域に戒厳令を布告)事件とつながりがある国際的な連続テロの可能性もあり得ないことではないとの見方を示している。
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自爆テロの翌日にあたる25日はインドネシアではキリスト昇天祭の祝日にあたり、また27日からはイスラム教徒にとって重要な「断食」が予定されていることから宗教関連の行事、施設が今後新たなテロのターゲットになることも十分予想されるとして治安当局は国民に警戒を呼びかける事態となっている。
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インドネシアは世界第4位の2億5500万人の人口を擁し、その88%がイスラム教徒と世界最大のイスラム人口を抱えている。
断食が始まると白装束に身を固めたイスラム急進組織が繁華街や盛り場を巡視してカラオケ店や風俗店、マッサージ店などに対し「イスラムの断食期間に相応しくない」と暴力的手法で営業中止に追い込む事案が後を絶たない。今年も同様事案への警戒が求められているところだった。
アイデンティティーの危機とも関連
こうしたイスラム急進組織の姿勢は、キリスト教徒で中国系のジャカルタ州知事バスキ・チャハヤ・プルナマ(通称アホック)氏が「宗教冒涜罪」などで禁固2年の実刑判決(5月9日)を受けたことや、判決に反対する立場から「宗教の寛容性」「多様性の中の統一」というインドネシア人のアイデンティティー再認識を求める運動が巻き起こったこととも関係している。
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ジョコ大統領も5月16日に治安組織のトップを呼び「社会の不安を煽り、分裂を惹起するような言論や宗教活動には厳しく対処するように。言論の自由、宗教の自由は憲法でも保障された権利であるが、国家の法と秩序への尊敬のない自由は認められない」と釘を刺し、断食期間中の治安に万全を期すよう求めた。
さらに自爆テロの直後の現場を記録した動画や写真がネットに多数出回っていることから、治安当局は「残虐な現場の様子で市民の不安や恐怖を煽る行為はテロに加担していることと同じである」として中止を求める事態にもなっている。
インドネシアは今、このように犯行グループの正体も背後関係も捜査中という自爆テロの衝撃と不安の中で断食月を迎えようとしている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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