年内完成が迫る中国と香港結ぶ橋 強まる本土支配の象徴か
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5月19日、香港と中国本土の珠江デルタを結ぶ、長さ約30キロの橋が完成に近づくなか、中国の当局者らは、香港との緊張が高まっているこの時期に、この橋が経済統合以上のものをもたらすことを期待している。写真左は建設プロジェクト責任者の1人である中国当局のWei Dongqing氏。珠海市で17日撮影(2017年 ロイター/James Pomfret)
香港と中国本土の珠江デルタを結ぶ、長さ約30キロの橋が完成に近づくなか、中国の当局者らは、香港との緊張が高まっているこの時期に、この橋が経済統合以上のものをもたらすことを期待している。
仏パリのエッフェル塔60基分以上の鋼鉄を使って建設されているこの海上橋「港珠澳大橋」が最初に提案されたのは1980年代のことだった。英国領だった当時の香港自治政府は、共産主義国である中国との距離が一段と近くなることを恐れ、橋の建設に反対した。
しかし、1997年に香港が中国に返還されると、香港と、珠江デルタにおける製造業とスプロール現象を融合させる数々のプロジェクトが飛び交い、香港に少なからず不安を与えている。
橋建設プロジェクトの責任者の1人である中国当局者Wei Dongqing氏は、欧州の元植民地である香港、マカオと、広東省珠海市をつなぐこの橋について、物理的にも心理的にも調和を促進するものとの見方を示した。
「橋は3つの場所をつなぎ、心理的影響をもたらす」と、完成半ばの6車線の橋の上を行く記者向けのツアーバスのなかで、Wei氏はロイターに語った。遠くにはマカオのカジノがかすかに見える。
「われわれは未来に自信がある。夢は統合された市場、統合された国民だ」
建設開始から8年近くが経過し、最後の試算によると、橋と海底トンネルを含むプロジェクトの総建設費は約190億ドル(約2.1兆円)にまで膨れ上がった。
橋は無用の長物との批判の声も上がっている。完成しても、発展は困難とみられており、交通量も1日あたり約4万台との予想には達しないと見込まれている。
年内には大半の工事が完了し通行可能になるとみられるが、料金所や税関・出入国管理施設を完備したフル稼働がいつになるのかは「分からない」とWei氏は語った。
「橋の完成後も、われわれは新たな課題に直面する。いかに効率よく運営し、地域全体を実際に利することができるかということだ」