トランプのエルサレム訪問に恐れおののくイスラエル
聖地エルサレムの「嘆きの壁」に祈るイスラエルのユダヤ教徒と国境警備隊兵士 Baz Ratner-REUTERS
<機密漏洩でイスラエルのスパイを危険にさらした上、来週、パレスチナと帰属を争う聖地エルサレムを訪問するというトランプに、かつて大いなる期待を抱いていた右派も左派も恐怖を感じ始めた>
テルアビブは今、重い空気に包まれている。イスラエルのスパイの命が危険にさらされているかもしれないのだ。
なぜか? ドナルド・トランプ米大統領が先週の水曜、テロ組織ISIS(自称イスラム国)のテロ計画に関する機密情報をロシアの外相らに漏らしたからだ。複数の関係者の話から、それらの情報はイスラエルがアメリカに提供したもので、極めて機密性が高く、第三国の情報機関と共有してはならない内容だった。情報を入手したスパイの身元が割れ、危害が及ぶ恐れがあるからだ。それをトランプは、わざわざ自分のツイッターでまで「大統領には知らせる権利がある」と強弁した。
イスラエル情報機関の元職員は怒っている。情報機関のトップを除けば、トランプが漏らした機密情報を提供した人物が地元の住民なのか、イスラエルから派遣されたスパイなのかは誰も知らない。ただ皆が、そのスパイが無事に潜入先から脱出してほしいと願っている。
オバマ前政権も警告
トランプが国家機密でさえ軽率に扱うことは、イスラエルにとって実は驚きではない。イスラエルの日刊紙イディオト・アハロノトは今年1月、バラク・オバマ米前政権がイスラエルの情報機関に対してトランプ政権と情報を共有し過ぎないよう忠告していたことを報じた。情報がロシア政府に筒抜けになる恐れがあるからだった。イスラエル政府は今になって、その警告に従わなかったことを後悔するはめになった。
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イスラエル政府は表向きは、平静を装っている。イスラエル・カッツ情報相は、「我が国はアメリカの情報機関に全幅の信頼を置いている。イランやISISなどの脅威について、今後も2国間の協力を継続し深化させる」と言った。アビグドル・リーベルマン国防相も、似たような声明を出した。しかしいずれも、トランプには言及しなかった。
2日前までは、イスラエルでは左派であれ右派であれ、トランプが自分たちの救世主になると考えていた。右派は、トランプがイスラエルとパレスチナの「2国家共存」案を破棄するものと信じていた。一方の左派は、トランプがついに和平を実現してくれると期待していた。だが今、そんな希望は打ち砕かれた。
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右派は先週、和平合意に本腰を入れるかのような言動を繰り返すトランプを見て見ないふりをした。在イスラエルの米大使館をテルアビブからエルサレムに移転するなど、昨年の米大統領選で掲げた強硬な公約を、トランプが実行してくれると信じたかったからだ。