トヨタとホンダをまねた中国自動車メーカーが躍進!
中国・広州汽車の独自ブランド「トランプチ」のSUV(スポーツ多目的車)「GS8」。フロントグリルのロゴ「G」は広州の英語名「Guangzhou」から取られている(写真:広州汽車)
安かろう悪かろう――。そんなイメージが付いて回る中国製品。自動車もその一つだった。しかし、そんな"常識"が変わりつつある。
「外資への出資規制を秩序立てて緩和する」。中国工業情報化省は4月25日、外資企業の自動車生産に関する規制緩和について初めて公式に言及し、業界に衝撃が走った。
中国で外資企業が自動車を生産するには、中国企業と合弁会社を設立しなければならないうえ、外資企業の出資比率が50%を超えてはならないという規制が設けられている。そのため、トヨタ自動車は第一汽車や広州汽車と、独フォルクスワーゲン(VW)は上海汽車や第一汽車と、といった具合に、外資各社は中国企業と合弁生産を行っている。
トヨタに学んだ中国ブランド車が台頭
外資との合弁生産を通じて技術力を高めてきた中国の自動車メーカーが今、独自ブランド車(合弁生産の車とは別に独立展開する車)でその頭角を現し始めている。
成長株として注目されているのが、中国南部の広州に拠点を置く広州汽車だ。販売規模(合弁生産含む)は中国で6位とあって、上海汽車や第一汽車などには及ばない。だが、「広州汽車の独自ブランド『トランプチ』は、中国現地ブランドのダークホースになる」(中国自動車市場に詳しい現代文化研究所の呉保寧上席主任研究員)と期待される。
広州汽車は、1998年にホンダと生産合弁会社を設立したのを皮切りに、日系との協業を進めてきた。このほど来日した広州汽車の曽慶洪会長は、「ホンダやトヨタなどの日系メーカーに学ぶことで、技術や品質、人材のレベルを上げてきた」と手ごたえを語る。
広州汽車は現在、ホンダやトヨタ、日野自動車、三菱自動車という日系メーカー4社と手を組んでいる。同社以外に、これだけの数の日系メーカーと合弁を持つ中国メーカーはない。「広州汽車は日系各社をまねて工夫しながら自主ブランドを育ててきたため、品質も評判もよい。今後、中国でさらにシェアを伸ばすだろう」(前出の呉氏)。
こうした商品性を武器に広州汽車は世界での競争に打って出る。曽会長は、「2019年にも独自ブランド車の米国輸出を開始し、ブランドの国際化を進める」と意気込む。今年1月には米デトロイトで開催された北米国際自動車ショーに、トランプチを出展。その反響は大きい。「すでに2000を超える販売店から引き合いを得ている」(曽会長)。
中国政府は「2025年には複数の中国現地ブランドが世界の自動車メーカーのトップ10に入る」というシナリオを描いており、広州汽車もこの流れに乗って、海外進出を急いでいる。
中国の自動車市場は2016年、前年比14%増の2800万台と米国の1.6倍の世界最大市場に成長した。その中で、現地ブランドのシェアは年々高まっている。2016年の中国系のシェアは43.2%とこの3年で2.9%高まったのに対し、日系は15.5%と同0.9%シェアを落とした(乗用車販売ベース、マークラインズ調べ)。