最新記事

デンマーク

「世界一幸福」なデンマークはイギリス人にとっても不思議の国

2017年4月21日(金)16時37分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

デンマークのビルンにあるレゴ社のオフィスビル ricochet64-iStock.

<ロンドンで『マリ・クレール』編集者として華々しい生活を送っていた女性が、夫とデンマークに移住して奮闘、「ヒュッゲ」な生活を模索するなかで得たもの>

「世界一幸福な国」リストでつねに上位にランクインしているデンマーク。その幸せ感を表現した「ヒュッゲ(Hygge)」という言葉が、イギリスやヨーロッパでブームとなっている。気温マイナス20度にもなる長く暗い冬を、家の中で快適に過ごすための生活の知恵を指して使う言葉だ。

ヒュッゲをキーワードにした本は何冊か出版されているが、イギリス人女性ヘレン・ラッセルによる『幸せってなんだっけ?――世界一幸福な国での「ヒュッゲ」な1年』(鳴海深雪訳、CCCメディアハウス)は、外国人からみたデンマークのヒュッゲ観を自らの体験をもとに綴ったもの。

ロンドンで雑誌『マリ・クレール』の編集者として華々しい生活を送っていた著者は、理想のライフスタイルを紹介する記事を書きながら、自分はいつもストレスを抱えており、毎晩アルコールなしでは眠れず、メールの受信ボックスから片時も逃れることができずにいた。子宝にもなかなか恵まれず、30代半ばという年齢がプレッシャーに拍車をかける。

そんなヘレンにある日、夫が思いがけない提案を持ちかけた。それは夫の憧れの会社、レゴ社への転職の話だ。

レゴ社といえば、お馴染みのブロック玩具を製造・販売するデンマークを代表する企業であり、最近日本でも名古屋にレゴランドがオープンしたのは記憶に新しい。ヘレンの夫(本書の中で彼は終始"レゴマン"と呼ばれる)はその純粋なレゴ愛を訴えるとともに、デンマークがいかに素晴らしい国であるかを伝え、妻の説得に成功する。

極東に住む私たち日本人からすれば、イギリス人がデンマークに移住するのはさほど困難ではないのでは?と思ってしまうが、それはとんでもない勘違いだ。

人口570万人のデンマークのなかでもユトランド半島の片田舎(レゴ社の本社があるビルンという町)に外国人が暮らすというのは、ヘレンのような都会育ちでポジティブ思考の持ち主にとっても簡単ではなさそうだ。それが冬であればなおさらである。

あまりの寒さで外に出ることがままならない北欧では、家のなかで快適に過ごすことが何より優先される。部屋にキャンドルをいくつも並べて家族や友人たちと食卓を囲んだり、お気に入りのデザイナーズ家具を揃えて室内を心地よく整えることは、インテリア雑誌のなかの夢の世界ではなく、多くのデンマーク人が実践していることだ。

それは単に、おしゃれに生活するというレベルを超えている。年間のキャンドルの消費量は、なんと1人あたり6キロ。冬場の圧倒的な日照不足に対抗するため、キャンドルはビタミンDやエクササイズ、日焼けサロンと並んで、冬の鬱から逃れるための必需品なのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

林氏が政策公表、物価上昇緩やかにし1%程度の実質賃

ビジネス

午後3時のドルは147円前半へ上昇、米FOMC後の

ビジネス

パナソニック、アノードフリー技術で高容量EV電池の

ワールド

米農務長官、関税収入による農家支援を示唆=FT
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中