最新記事

北朝鮮

25日に何も起こらなくても、北朝鮮「核危機」は再発する

2017年4月24日(月)13時05分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)

もし米国が北朝鮮を攻撃すれば、周辺国に甚大な被害が生じることは避けられない。同盟国である日本と韓国が核の報復を受ける可能性が大きくなる。

核の報復でなくとも、とくに韓国は通常火力による被害は避けられない。もちろん在日韓米軍、そして韓国に在住する15万人、日本に在住する5万人以上もの米国人が北朝鮮の脅威にさらされる。北朝鮮を攻撃することはシリアへの攻撃よりも、はるかにリスクが高いのである。

現時点で、両国に在住する米国人を避難させるような動きは見せていないことから、米国がいきなり北朝鮮を攻撃するのは現実的ではないと見られる。ただし、ここで厄介なのは、金正恩の側にもトランプは攻撃してこないだろうという目算があったと見られることだ。

13日、金正恩は平壌市内の高層マンション群「黎明(リョミョン)通り」の竣工式に現れた。こうした場に金正恩が現れるのは極めて異例だ。海外メディアを気にしたのか、それとも自分に対する攻撃に不安があったのか、落ち着きがなかったものの、15日には軍事パレードのひな壇で、最初から終わりまで軍事パレードを鑑賞した。

攻撃されるかもしれないという状況のなかで衆前に姿を現したということは、米国の攻撃はないと見ていたのか。それとも、米国を含む外国メディアが大挙押し寄せているなかで、攻撃できるものならしてみよという捨て身の姿勢なのか。

金正日時代と今では「核戦略」に大きな違いがある

トランプと金正恩の姿勢をつぶさに見ていると、両者は決定的な局面に突入するつもりはないように思える。現状では、一時的に緊張は高まっているが、しばらく経つと、何事もなかったかのように通常の対立関係にもどる可能性が高い。

2013年に北朝鮮がいきなり休戦協定の白紙を宣言した時は、今回以上に緊張したが、しばらく過ぎると南北も米朝も通常どおり(緊張状態だが)にもどったのだ。

ただし、両者が判断ミスをすれば、事態が急展開する可能性は捨てきれない。例えば、トランプが軍事的圧力を強めれば強めるほど北朝鮮の態度は軟化すると思い込んで、このまま強め続ける。また、金正恩があくまでもトランプの圧力はブラフと見越して、核実験や長距離弾道ミサイルの発射実験を強行する──となると、両者共々、引き際を見誤り、緊張状態がエスカレートして、思わぬ展開に突入するかもしれない。または、偶発的な小規模な衝突が、状況悪化に拍車をかけるかもしれない。

(参考記事:【動画】吹き飛ぶ韓国軍兵士...北朝鮮の地雷が爆発する瞬間

また、この緊張状態が解けたとしても、問題が解決したわけではない。金正恩は25日前後の核実験やミサイル発射を見送ったとしても、遅かれ早かれ強行し、核武装国家に向けて着々と進んでいくだろう。その時、トランプは今回のように軍事的圧力をかけられるのだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

訂正(5日配信記事)-米大統領、アフガンとパキスタ

ワールド

米・ウクライナ、来週サウジで会談の計画 和平合意枠

ビジネス

米貿易赤字、1月は1314億ドルと過去最大 駆け込

ビジネス

ECB、5会合連続利下げ 「不確実性」警告し一時停
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 7
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 8
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 9
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中