最新記事

ロシア

ロシアの反政府デモにたまらず参加した子供たち

2017年3月30日(木)16時00分
エミリー・タムキン

モスクワで先週日曜に行われたデモに参加して機動隊に追われている子供 Sergei Karpukhin-REUTERS

<反政府活動家ナバルニーが呼びかけたに日曜のデモには子供も多く、警官に追われている子供もいた。ロシア政府もさすがに戸惑いを隠せない>

26日にロシア各地で行われた汚職に抗議する反政府デモでは1000人以上が拘束された。参加者の多くは若者で、子供も目立ったのが特徴だ。報道やソーシャルメディアには警察につかまる子供が映った写真がたくさんある。

ロシア政府は28日、子供がデモに参加したのはカネで雇われていたからだ、と発表した。

【参考記事】プーチン、新しい親衛隊創設で反政府デモに備え

「未成年者、はっきり言えば、ほんの子供を意図的に惑わし、金銭的な報酬で釣って、違法の集会に参加させるような人々を尊敬はできない」と、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官は語った。

モスクワ・タイムズによると、デモの呼び掛け人で大統領選出馬も表明している反政府活動家アレクセイ・ナバルニーが、逮捕されても欧州人権裁判所の裁定でロシア政府から損害賠償が受けられる、と言ったことを受けた発言だという(ナバルニーはモスクワの裁判所に15日間の拘束を言い渡され、彼が主宰する「反腐敗財団」のスタッフ11人も逮捕された)。

【参考記事】亡命ロシア下院議員ボロネンコフ、ウクライナで射殺

だがペスコフ発言の背景には、反政府デモに大勢の若者、特に十代の若者が参加したことに対するロシア政府の戸惑いが見え隠れしている。モスクワの集会では小学校5年の子供までが演説で自分の思いを訴えた。

指導者がプーチンでもナバルニーでも機能する法制度が必要だ、と訴える小学5年生のグレブ・トクマコフ

親や祖父母の世代と違って、この世代はソ連崩壊もその後の混乱も知らない。インターネット時代に育った彼らは、国営テレビのプロパガンダとも無縁で、ウラジーミル・プーチン大統領がロシアを救ったという「神話」を信じていない。

【参考記事】秘密のベールに包まれたプーチンの娘を追え!

ロシア政府はこの世代にどう対処すべきか分かっていないようだ。2011年に選挙の不正に抗議して大規模なデモが起きた時と同様、今回もデモは西側の陰謀であり、参加者は西側にカネで雇われた連中だと決めつけて、世論の怒りを封じ込めようとしている。

11年には、デモは当時のヒラリー・クリントン米国務長官の仕業だと決めつけたが、今回は平和的なデモに対する弾圧を非難した米国務省を無視しただけだった。

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、欧米でもデモに対して警察は「警棒や催涙ガスなどあらゆる手段」で鎮圧すると発言。かつてプーチンが「友好勲章」を授与したレックス・ティラーソン米国務長官を直接非難することは避けた。

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    注目を集めた「ロサンゼルス山火事」映像...空に広が…
  • 10
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中