最新記事

原油

原油が世界中からアジアに集結 OPEC減産で長距離輸送でも妙味

2017年2月25日(土)11時49分

2月22日、OPECの減産を契機に原油に価格差が生じて裁定取引が可能になったことなどを背景に、世界各地から原油タンカーがぞくぞくとアジアに集結している。写真は仏マルセイユ付近で撮影された原油タンカー。2008年12月撮影(2017年 ロイター/Jean-Paul Pelissier)

世界各地から原油タンカーがぞくぞくとアジアに集結している。石油輸出国機構(OPEC)の減産を契機に原油に価格差が生じて裁定取引が可能になったほか、タンカー運賃も値下がりし、たとえ長距離を輸送してもアジアでの販売に妙味があるため。

米WTI原油と北海ブレント原油の価格差は、OPECとロシアなどOPEC非加盟国が日量180万バレルの減産で合意する前の昨年11月にはほぼゼロだったが、現在は2.40ドルとなっている。

コンサルタント会社アイビー・グローバル・エナジーのディレクター、タシャール・バンサル氏は「OPECの減産で長距離輸送での裁定取引に道が開かれた。そのため(アジアは)遠方からの輸入が増え、OPECからの供給減少の穴を埋めている」と述べた。

BMIリサーチも顧客向けノートで「OPECの減産でアジアの原油市場に歪みが生じた」と指摘した。

OPECはシェア低下

アジアには米国、英国、ブラジル、さらには戦火のたえないリビアからも原油が集まっている。トムソン・ロイター・オイル・リサーチ&フォーキャストのデータによると、2月のアジアへの原油流入は3500万バレル(日量126万バレル)と、昨年10月の1040万バレル(同33万6000バレル)から大幅に増加した。

OPECは通常、アジアの石油需要の70%程度を満たしているが、昨年10月以降でシェアを5%失った計算だ。

コンサルタント会社クリストル・エナジーのディレクターのキャロル・ナフル氏は「現在の石油市場では、OPECはさらなる減産でシェアを失う恐れがある」と話す。

OPEC諸国とアジアの顧客との関係はどちらかと言えば良好だが、日本や中国、韓国など北アジアに拠点を置く精製業者は需要を満たすために他の供給元に乗り換えるのをためらわないだろう。

米国、英国、ブラジルからアジアへの原油輸出は軒並み急増。タンカーの運航計画からすると、この流れは3月も続きそうだ。

BMIは、OPECの減産、とりわけ中質油とサワー原油での減産により、油質が同等の地中海原油はアジア市場に参入する機会を手に入れたと指摘した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中