最新記事

ミャンマー

12歳で売られた花嫁 ロヒンギャの少女を取り巻く現実

2017年2月21日(火)16時05分

2月15日、迫害や暴力に満ちたミャンマー西部ラカイン州から、マレーシアに逃れて来る大勢のイスラム系少数民族ロヒンギャの少女が、ロヒンギャ男性に花嫁として売る人身売買業者の犠牲になっている。写真は、夫から逃れてマレーシア首都郊外で家族と暮らす少女。9日撮影(2017年 ロイター/Lai Seng Sin)

ターコイズ色のヘッドスカーフを巻いたか細い少女は、暴力にまみれたミャンマー西部ラカイン州からマレーシアに逃れる途中で自分の身に起きたことを思い出しながら涙をこらえた。

当時わずか12歳だったこの少女は、10歳以上も年の離れた見ず知らずの男性との結婚を強いられた。

現在まだ13歳であるため彼女の名前は明かせないが、迫害や暴力、アパルトヘイト(人種隔離)のようなラカイン州での状況から逃れて来る大勢のイスラム系少数民族ロヒンギャの少女の1人である。だがそうした少女たちは結局、隣国マレーシアにいるロヒンギャ男性と結婚するために売られてしまうのだと、移民支援団体やロヒンギャの人たちは語る。

この少女によると、マレーシアに向かう途中で家族と離ればなれになり、人身売買業者に捕まった。そしてタイとマレーシア国境付近のジャングル地帯で、他の大勢の少女と共に、汚くて過酷なキャンプに数週間、監禁された。もし結婚に同意すれば、ロヒンギャ男性が自由にしてくれると、人身売買業者は彼女に言ったという。

「私は男の人に売られたと業者が言ったので、どうしたらそんなことができるのかと私は尋ねた。心は重く、怖かった」と、少女はクアラルンプールで行ったインタビューでこう語った。

ロイターは少女の証言の一部を独自に確認することはできなかった。しかし解放されるまでの数週間、少女はキャンプに捕らえられていたと母親が確認した。

少女の苦難は多くのロヒンギャが直面する困難の1つにすぎない。ロヒンギャはバングラデシュからの不法移民としてミャンマー政府からみなされ、権利も制限されている。

2012年以降、暴力や衝突によって多くのロヒンギャが殺害され、マレーシアやタイ、インドネシアやバングラデシュといった近隣諸国に避難しようとする人が後を絶たない。

ロヒンギャが多く住むラカイン州では昨年10月に武装集団が警察を襲撃する事件が発生し、治安機関が掃討作戦を展開。国連人権高等弁務官事務所は今月、掃討作戦で大量虐殺や性的暴行が行われたとの報告書を発表した。人道に対する罪に該当する確率が「極めて高い」ほか、民族浄化の可能性もあるという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国11月製造業PMI、2カ月連続で50上回る 景

ワールド

焦点:戦闘員数千人失ったヒズボラ、立て直しには膨大

ビジネス

NY外為市場=円が対ドルで6週間ぶり高値、日銀利上

ワールド

ゼレンスキー氏、陸軍司令官を新たに任命 内部改革の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える新型ドローン・システム
  • 3
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合の被害規模は想像を絶する
  • 4
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 5
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 6
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 7
    定説「赤身肉は心臓に悪い」は「誤解」、本当の悪者…
  • 8
    ペットの犬がヒョウに襲われ...監視カメラが記録した…
  • 9
    「すぐ消える」という説明を信じて女性が入れた「最…
  • 10
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 4
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 7
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 10
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中