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南シナ海米中対立で緊迫の南シナ海、「軍事衝突」の可能性は?
1月24日、中国は、南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)において同国は「反論の余地のない」主権を有すると述べ、トランプ米政権が「国際水域」を守ると表明したことに対して強く反発した。写真はフィリピン空軍機から撮影した、中国が人工島を造成しているとされる同諸島。2015年5月撮影(2017年 ロイター/Ritchie B. Tongo)
中国は24日、南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)において同国は「反論の余地のない」主権を有すると述べ、トランプ米政権が「国際水域」を守ると表明したことに対して強く反発した。
アジアにおける領有権の主張を強める中国に対して、これまで慎重対応を維持してきた米国だが、スパイサー米大統領報道官は23日、そのような方針から決別する姿勢を明確にした。
米国務長官に指名されたレックス・ティラーソン氏が11日の指名承認公聴会で、中国に対して南シナ海の人工島へのアクセスを認めない姿勢を明確にすべきだと発言したことについて、トランプ大統領も同じ意見かと聞かれたスパイサー報道官は、「米国は(南シナ海での)自国の国益を確実に守る」と明言。
「これらの人工島が実際に、中国の領海ではなく国際水域にあるかどうかが問題で、もしそうならば一国が国際水域を奪取する行為を阻止する」と同報道官は語った。
中国外務省の華春瑩報道官は24日の定例会見で、南シナ海の領有権紛争において「米国は当事国ではない」と述べた。南沙諸島の主権は「反論の余地なく」中国にあると語り、南シナ海について慎重に発言し、行動するよう米国に求めた。
また、中国は同海域における航海の自由を守ることに尽力しており、当事国間で話し合い、平和的解決を望むとの考えを示した。「われわれは米国に対し、南シナ海の平和と安定を損なわないよう、事実を尊重し、言動を慎むことを求める」と、同報道官は語った。
<人工島へのアクセス禁止>
指名承認公聴会においてティラーソン氏が南シナ海について発言した翌日、中国の国営メディアは、米国が「開戦」を迫られることになると報じている。
公聴会で米国が中国に対しより攻撃的な姿勢を取ることを支持するかと問われたティラーソン氏は、「米国は中国に対し、まずは人工島建設を中止すべきであり、次に人工島へのアクセスは認められないとする明確なシグナルを送る必要がある」と語った。
米石油大手エクソンモービル
だが、スパイサー報道官の発言同様、ティラーソン氏のこうしたコメントは、海上封鎖も含めた米国による軍事行動の可能性を示唆するものだと専門家はみている。そうなれば、手強さを増す核軍事大国の中国と軍事衝突するリスクを招く。
世界第2の経済大国でもある中国は、米国民の職を奪っているとして、すでにトランプ大統領の非難の的となっている。
スパイサー報道官は中国に対する具体的な措置への言及を避け、「今後より多くの情報が手に入るだろう」と述べるにとどめた。
<危険なエスカレーション>
軍事専門家は、米海軍にはアジアにおいて艦船や潜水艦、航空機による封鎖作戦を遂行する能力があるが、増大する中国軍の艦隊に対してそのような行動に出れば、危険なエスカレーションを招くと指摘する。
中国の台頭に対抗すべく、トランプ大統領は東アジアで大規模な海軍増強を計画していると、側近は語っている。
中国外務省はティラーソン発言の意図は不明だとしていた。これは大統領就任前、トランプ氏が米紙とのインタビューで行った、「一つの中国」原則は交渉の対象になりうるとの挑発的発言に続くものだ。
新アメリカ安全保障センターの南シナ海専門家であるミラ・ラップホッパー氏は、中国のアクセスを認めないとの米国の脅しは「信じがたい」と述べ、国際法において根拠がないとの見方を示した。
「実際にアクセスさせないようにするには封鎖しなければならないが、そうなればもう戦争行為だ」と同氏は警鐘を鳴らす。
「トランプ政権は、アジアにおいて越えてはならない一線を引き始めた。だがそれは、守ることがほとんど不可能でありながら、中国との関係を非常に不安定化させ、危機を招き、米国が信頼できないパートナーであると世界に確信させることになるものだ」と付け加えた。
また、米戦略国際問題研究所(CSIS)のボニー・グレーザー氏は、スパイサー報道官の発言は「憂慮すべき」と述べ、トランプ政権が「混乱させるような、矛盾するメッセージを送っている」と語る。
ヘリテージ財団のディーン・チェン氏は、スパイサー報道官の発言はトランプ政権が南シナ海を重要な問題とみなしていることを示すものだと説明。
スパイサー、ティラーソン両氏とも、具体策に触れていないことは注目すべきであり、軍事的措置ではなく、経済的措置を中国と人工島建設に関わる同国企業に対して講じる可能性が残されている、とチェン氏は指摘した。
(Ben Blanchard記者、David Brunnstrom記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)