最新記事

アメリカ政治

トランプが財務相に選んだムニューチンの「貧困層いじめ」疑惑

2016年12月1日(木)16時50分
フレッド・ルーカス

父子2代でゴールドマン・サックス出身のムニューチン Mike Segar-REUTERS

<トランプが財務相に起用したムニューチンも商務相に起用したウィルバー・ロスも、弱った会社を買収し、リストラで再建するのを得意としていた。トランプが公約した製造業の復活や雇用創造につながるのか>

 ドナルド・トランプ次期米大統領が財務長官に指名したスティーブン・ムニューチン(54)は、ゴールドマン・サックスで働いた後ハリウッドは大作映画を製作し、選挙戦の間はトランプ陣営の責任者を務めていた。トランプの多くの取り巻きと同じく、純資産4000万ドルと言われる富豪でもある。

 米上院で指名が承認されれば、ムニューチンは所得減税やFTA(自由貿易協定)、インフラ建設などの成長政策を指揮することになる。

 同日に商務長官に指名された知日派のウィルバー・ロスも投資家で、買収ファンドを通じた企業再建を得意とするが、「ハゲタカ」の批判もある。ムニューチンも同じだ。

トランプが蘇らせるウォール街

 大統領選中に民主党候補のヒラリー・クリントンとウォール街の近しい関係を激しく批判したトランプの経済閣僚がいずれも投資家とあって、リーマンショックで力を失ったウォール街は歓迎ムードだ。

【参考記事】ウォール街を出しぬいた4人の男たちの実話

 ムニューチンについて知っておくべき5つのポイントを挙げる。

1)父子2代でゴールドマン・サックス出身

 父親のロバート・ムニューチンは米証券大手ゴールドマン・サックスのトップトレーダーから美術商に転じた人物。息子のムニューチンもエール大学卒業後、22歳でゴールドマン・サックスに入社し、17年間勤務して2002年に退社した。

【参考記事】ゴールドマンの過労死対策、「勤務は午前0時まで」

 ゴールドマン・サックスでは政府債、モーゲージ証券、短期金融市場商品、地方債の取引を監督し、最終的にはCIO(最高情報責任者)を務めた。

 ゴールドマン・サックスは民主・共和両党に政治的影響力を持つ証券大手として知られる。議会に承認されれば、ムニューチンはゴールドマン・サックス出身の3人目の財務長官となる。ビル・クリントン時代のロバート・ルービン、ジョージ・W・ブッシュ時代のヘンリー・ポールソンもゴールドマン・サックス出身の財務長官だった。

【参考記事】AIG「強欲復活」は米景気回復のサイン?

2)ソロスの下で働く

 大富豪の投資家ジョージ・ソロス率いるソロス・ファンド・マネジメントと、その関連会社SFMキャピタル・マネジメントで一時期働いた。ソロスはリベラルな政治運動や政治家に多額の寄付をしていることで知られ、今回の大統領選では民主党候補ヒラリー・クリントン陣営の資金集め団体「プライオリティーズUSA」に多額の献金を行った。

 ムニューチンがソロスとどの程度親しかったか、そもそも付き合いがあったかどうかは不明だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P500・ダウ反発、大幅安から切

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、トランプ関税発表控え神経質

ワールド

英仏・ウクライナの軍トップ、数日内に会合へ=英報道

ビジネス

米利下げ時期「物価動向次第」、関税の影響懸念=リッ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中