最新記事

アメリカ政治

トランプ選挙公約「NAFTA再交渉」は譲歩も必要 TPP条項採用も

2016年11月22日(火)19時31分

11月22日、トランプ次期米大統領はNAFTAの再交渉に臨む計画だが、締結国のカナダとメキシコも難しい譲歩を迫る可能性があり、米国の思うようにばかりはいかないとみられる。メキシコと米国の国境近くの税関で2日撮影(2016年 ロイター/Daniel Becerril)

 トランプ次期米大統領は、米労働者にとって「はるかに有利な条件」を引き出すために北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に臨む計画だが、締結国のカナダとメキシコも難しい譲歩を迫る可能性があり、米国の思うようにばかりはいかないとみられる。

 米通商代表部(USTR)の次席代表代行を務めていたウェンディ・カトラー氏は「再交渉で要求を出せば、他方は譲歩を期待する。何を求めるのか、そして何を与えることができるのかを知ることが必要だ」と指摘する。

 トランプ氏は選挙キャンペーン中、NAFTAを「最悪の協定」と呼び、自動車などメキシコからの輸入品に高い関税を課す可能性を示唆した。

 しかし、専門家は協定を破棄せずに関税を引き上げることは困難とみる。

 ピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、チャド・ボウン氏は「自由貿易協定の交渉で一方が他方よりも高い水準に関税を引き上げるという先例はない」と指摘。

「米国の労働者がメキシコの労働者よりも割高なら、公平性を保つ唯一の方法はメキシコのコスト上昇につながる対策を取ることだ」と述べた。

 こうした対策の一つとして挙げられるのは、環境・労働保護基準の強化に向けた交渉だろう。そうすればメキシコなど低所得国の製造コストが押し上げられるからだ。

TPPの要素採用も

 NAFTAが発効して以降、米国の対カナダ・メキシコ貿易総額は年間1兆3000億ドルと4倍に拡大。一方、カナダ・メキシコに対する米貿易赤字は1993年の91億ドルから2015年に762億ドルに膨らんだ。

 NAFTAの効果をめぐる見解はまちまちで、米国の雇用が失われたとの否定的な見方がある一方、雇用は拡大したと意見もある。

 NAFTAの再交渉は、環境・労働・デジタル経済の基準に関する条件を強化するため、皮肉にもトランプ氏が離脱する考えを示した環太平洋連携協定(TPP)の主要部分を取り入れることになる可能性がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ルーブル下落、パニックになる理由ない=ロシア大統領

ワールド

再送メキシコ大統領、トランプ氏と電話会談 関税巡る

ワールド

仏内閣が電力増税方針を撤回 労働者負担軽減求める極

ワールド

プーチン大統領、トランプ氏の安全に懸念表明 暗殺未
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖値改善の可能性も【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    ペットの犬がヒョウに襲われ...監視カメラが記録した…
  • 5
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 6
    トランプを勝たせたアメリカは馬鹿でも人種差別主義…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    日本を標的にする「サイバー攻撃者」ランキング 2位…
  • 9
    谷間が丸出し、下は穿かず? 母になったヘイリー・ビ…
  • 10
    NewJeansはNewJeansじゃなくなる? 5人と生みの親ミ…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 9
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中