トランプ選挙公約「NAFTA再交渉」は譲歩も必要 TPP条項採用も
11月22日、トランプ次期米大統領はNAFTAの再交渉に臨む計画だが、締結国のカナダとメキシコも難しい譲歩を迫る可能性があり、米国の思うようにばかりはいかないとみられる。メキシコと米国の国境近くの税関で2日撮影(2016年 ロイター/Daniel Becerril)
トランプ次期米大統領は、米労働者にとって「はるかに有利な条件」を引き出すために北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に臨む計画だが、締結国のカナダとメキシコも難しい譲歩を迫る可能性があり、米国の思うようにばかりはいかないとみられる。
米通商代表部(USTR)の次席代表代行を務めていたウェンディ・カトラー氏は「再交渉で要求を出せば、他方は譲歩を期待する。何を求めるのか、そして何を与えることができるのかを知ることが必要だ」と指摘する。
トランプ氏は選挙キャンペーン中、NAFTAを「最悪の協定」と呼び、自動車などメキシコからの輸入品に高い関税を課す可能性を示唆した。
しかし、専門家は協定を破棄せずに関税を引き上げることは困難とみる。
ピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、チャド・ボウン氏は「自由貿易協定の交渉で一方が他方よりも高い水準に関税を引き上げるという先例はない」と指摘。
「米国の労働者がメキシコの労働者よりも割高なら、公平性を保つ唯一の方法はメキシコのコスト上昇につながる対策を取ることだ」と述べた。
こうした対策の一つとして挙げられるのは、環境・労働保護基準の強化に向けた交渉だろう。そうすればメキシコなど低所得国の製造コストが押し上げられるからだ。
TPPの要素採用も
NAFTAが発効して以降、米国の対カナダ・メキシコ貿易総額は年間1兆3000億ドルと4倍に拡大。一方、カナダ・メキシコに対する米貿易赤字は1993年の91億ドルから2015年に762億ドルに膨らんだ。
NAFTAの効果をめぐる見解はまちまちで、米国の雇用が失われたとの否定的な見方がある一方、雇用は拡大したと意見もある。
NAFTAの再交渉は、環境・労働・デジタル経済の基準に関する条件を強化するため、皮肉にもトランプ氏が離脱する考えを示した環太平洋連携協定(TPP)の主要部分を取り入れることになる可能性がある。