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フランス極右・国民戦線の地元で躍進するフィヨン元首相 ルペン党首はどう挑むか
11月28日、来年のフランス大統領選は、中道・右派の予備選を制したフランソワ・フィヨン元首相が既成政党の代表として、反EUと反移民を掲げる極右の国民戦線のマリーヌ・ルペン党首(写真)の挑戦を受ける構図となってきた。パリで16日撮影(2016年 ロイター/Charles Platiau)
来年4─5月に行われるフランス大統領選は、中道・右派の予備選を制したフランソワ・フィヨン元首相が既成政党の代表として、反欧州連合(EU)と反移民を掲げる極右の国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首の挑戦を受ける構図となってきた。
フィヨン氏はこれまでのフランスの支配階層の政治家にはないタイプで、ルペン氏にとって予想外の試練となると同時にチャンスももたらしている。
ルペン氏への逆風は、フィヨン氏が27日の予備選・決選投票においてFNが強い地盤で最も高い得票率を記録したことだ。フィヨン氏の社会的な保守姿勢と移民への強い態度は、ある程度FNのお株を奪っており、この日はルペン氏の支持率も低下した。
一方でフィヨン氏が退職年齢引き上げや売上税アップ、労働時間延長といった思い切った経済改革を提唱している点は、ルペン氏が付け入るすきがある。ルペン氏がこうした政策に反対して、フランスの伝統とみなされる経済的な原則を守ると主張すれば、労働者層の支持を得られるだけでなく、中道左派の有権者にもアピールできるだろう。
フィヨン氏の社会的な保守姿勢と経済政策の急進性のどちらに有権者が目を向けるかが、フランスでも米大統領選や英国民投票と同じように既成政治の敗北という予想外の結果に終わるかどうかを決定する要素となってもおかしくない。
FNの大統領選選対責任者ダビッド・ラクリーヌ氏は28日に支持者向けに送った動画やツイッターへの投稿で早速、「フィヨン氏が大統領になれば各世帯と中間層、労働者層に手ひどい経済的、社会的なマイナスをもたらす」と攻撃。特に公務員削減方針をやり玉に挙げた。こうした普段なら左派から出てくるような批判とともに、フィヨン氏を「既成政治の新たなスター」と呼んで本当に移民に厳しく臨めるのかとの疑問も投げかけた。
ただ中道・右派の予備選後最初に公表された調査によると、大統領選第1回投票の得票率予想はフィヨン氏が26%、ルペン氏が24%で、ルペン氏にとってはここ数カ月で最も低い数字だった。
トゥール大学のFNを専門に研究するシルベン・クレポン氏は「FN支持者の一部は国家からもっと保護してほしいと望んでいる。だが支持者の中には極右で伝統主義を唱える人々もあり、フィヨン氏はこれらの有権者に浸透していくことができる」と説明した。
世論調査会社IFOPのジェローム・フーケ氏は、FNは昨年の地方選で伝統的なカトリック教徒の間で勢力を伸ばしたとはいえ、中道・右派の第1回予備選の際に実施した調査では、この予備選に参加したカトリック教徒の有権者はフィヨン氏を圧倒的に支持したと述べた。
フーケ氏によると、中道・右派連合の予備選はすべての有権者に開放されており、少数のFN支持者が参加したという。
ラクリーヌ氏が首長を務め、FNの強い地盤の1つであるヴァール県では、中道・右派連合の予備選・決選投票においてフィヨン氏の得票率が79.4%と、全国平均の66.5%よりも高くなった。
もっとも世論調査会社オドクサによると、フィヨン氏は高度専門職種の有権者からかなり票を集めた半面、労働者層と公務員はルペン氏に好意的で支持獲得に苦戦した。これは今後の選挙戦における重大な問題の1つになる可能性がある。
ルペン氏は父親のジャン・マリー・ルペン氏から2011年にFNの党首を引き継いだ後、自由経済主義と中小企業寄りの政策を掲げる姿勢からフランスの高福祉を保証する方針に転換した。一方で党内にはルペン氏のめいで、企業に友好的で大きな政府に否定的なマリオン・マレシャル・ルペン氏が率いる勢力も存在する。
フィヨン氏が中道・右派の統一候補になったことで、FN内のこうした路線対立が鮮明化する恐れも出てきている。
(Ingrid Melander記者)