最新記事

中国

日の当らないモールで見世物にされたシロクマに光明?

2016年11月15日(火)16時07分
ジャック・ムーア

涙をためた?ピザ ANIMAL ASIA/YOUTUBE

<狭い部屋に閉じ込められて世界一気の毒なクマと呼ばれたシロクマのピザが、両親の下に帰ることになった。ただし設備拡張が済めばまだ引き戻されるようだ。人々は元の動物園は閉鎖するよう訴えている>

「世界一かわいそう」と呼ばれたシロクマの「ピザ」が、中国・広州市にあるショッピングモール「グランドビューモール」(正佳広場)での窮屈な環境から、生まれ故郷の海洋公園に一時的に移送されたとモール側が明かした。ピザの境遇に対しては、動物愛護運動家たちから非難の声が数多くあがっていた。

 行先は明らかにされていないが、ピザは、中国北部にある海洋公園で両親と再会することになっている。

 グランドビュー水族館がソーシャルメディアに投稿したお知らせには、「多数のお客さまに愛されている『赤ちゃんグマ』のピザは、しばらく皆さまとお別れし、パパとママが待つ生まれ故郷に帰ることになりました」と書かれている。このお知らせによると、今回の引っ越しの目的は、同水族館の飼育スペースの「最適化とアップグレードを図る」ためだという。

日の当らない部屋で

 ピザが「世界一かわいそうなシロクマ」として知られるようになったのは、動物愛護団体「アニマルアジア」が公開した映像がきっかけだった。映像には、小さなプールが1つしかない、40平方メートル未満の飼育スペースでピザが暮らしている様子が映し出されていた。

【参考記事】シロクマに包囲され逃げられないロシア観測隊、番犬犠牲に

 また別の動画では、ピザは一日中日の当らない部屋でぐるぐる回り、来場者たちのカメラのフラッシュを浴び続ける。ときにはくるったように首を振りながら走ったり壁に体当たりして、明らかにストレスに苦しんでいる様子も見せた。

 イギリスのヨークシャー野生動物公園は2016年9月、グランドビュー水族館で窮屈な生活を送る「世界一かわいそうな」シロクマを救うことを決意。同公園内にある、シロクマ専用に設計された飼育施設でピザを受け入れると申し入れていた。

 広州日報紙によると、今回のアップグレードでピザの飼育スペースは2倍の大きさになるというが、グランドビュー水族館に関しては、これまでに百万人近くが、閉鎖を求めて嘆願書に署名を行ってきた。動物愛護団体は今回の措置を歓迎する一方で、ピザを移送先に永住させるべきだと主張している。

【参考記事】中国犬肉祭りは文化どころか金儲け

 中国国営の環球時報が9月に報じたところによると、広州市海洋漁業局は、同水族館で不審な死を遂げた動物たちに対する責任をめぐって、グランドビュー水族館への調査を開始したという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは152円前半に下落、米雇用統計・日

ビジネス

中立金利1%を念頭に適時・段階的に利上げ、ペースは

ワールド

焦点:衝撃与えたトランプ氏「ガザ所有」発言、新政権

ワールド

ベトナム、1月輸出は前年比7%減 旧正月の影響で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 3
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 4
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    「僕は飛行機を遅らせた...」離陸直前に翼の部品が外…
  • 7
    戦場に響き渡る叫び声...「尋問映像」で話題の北朝鮮…
  • 8
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 9
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 10
    【USAID】トランプ=マスクが援助を凍結した国々のリ…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 7
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 8
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 9
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中