アメリカ企業、トランプ勝利で海外利益への大幅減税を期待
11月10日、米大統領選でドナルド・トランプ氏(写真)が勝利し、共和党が連邦議会の上下両院を抑えたことで、米大手企業の間では海外利益での課税に対する大規模減税導入への期待が高まっている。ノースカロライナ州で3月撮影(2016年 ロイター/Chris Keane)
米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利し、共和党が連邦議会の上下両院を抑えたことで、米大手企業の間では海外利益での課税に対する大規模減税導入への期待が高まっている。
トランプ氏と共和党にとって税制改革は最も実りの多い分野。それぞれが独自案を示しているが、内容は類似している。いずれも法人税の税率引き下げと個人所得税の簡素化・税率引き下げを盛り込み、企業が低い税率で海外に溜め込んだ利益を本国に持ち込むことを認めていることから、抜本改革への期待が高まっている。
プライスウォーターハウスクーパースの税制政策サービス事業の共同責任者、ローイト・クマール氏は「税制政策に関しては、トランプ氏は事を進めるに当たって基本的に下院の青写真を取り込んだ」と指摘。「来年に事態が動く可能性はこの数年で最も高い」と述べた。
問題の核を成しているのは、企業が本国に送金するまでは海外利益に課税しないことを定めた法人税制。この税制の下で米大企業が海外に溜め込んだ利益は2兆6000億ドルに上る。
法人税の監視団体シチズンズ・フォー・タックス・ジャスティスの3月の推計によると、海外保有利益が最も多いのはアップルの2000億ドルで、これにファイザー(1940億ドル)、マイクロソフト(1080億ドル)、ゼネラル・エレクトリック(GE)(1040億ドル)が続く。
共和党が導入を働きかけている下院案は、法人税率を35%から20%に引き下げ、多国籍企業に既存の海外利益の本国送還を義務付けるとともに、「テリトリアル課税」制度を導入して海外利益への課税をほぼ停止するという内容。
一方のトランプ氏は法人税率を15%まで引き下げ、現金で保有する海外利益については本国送金に10%の税率を適用し、今後10年間にわたって支払い可能とするよう提案している。