不安定化するトルコで、拡大する内務省の役割
テロとの戦いがトルコの喫緊の課題
クーデタ未遂後の2016年8月末、内務大臣であったエフカン・アラが突然辞任し、9月1日に新たにスレイマン・ソイルがその職に就いた。1969年生まれで47歳のソイルは元々、公正発展党ではなく、90年代に連立政権が続いた時代にその中心となっていた正道党に属していた。2008年には正道党の後継政党である民主党の党首に選ばれたが、民主党は2000年代に全く選挙で支持を得ることができず、ソイルは2012年に公正発展党に加わった。
ソイルを公正発展党に熱心に誘ったのは、当時首相で現在大統領であるレジェップ・タイイップ・エルドアンであったと言われている。今年5月からは労働・社会保障大臣を務めていた。ソイルは7月15日のクーデタ未遂後に街頭に出て熱心に反クーデタ活動を展開したことで閣僚の中でも重要な内務大臣の職を得た。余談だが、公正発展党は他党で要職に就いていた人物を引き抜き、閣僚に抜擢することが比較的多い。ソイルの他に、人民の声党で党首を務めていたニュマン・クルトゥルムシュが副首相を務めている。
公正発展党政権はますますテロとの戦いに力を入れている。最近ではPKKへの攻勢を強めている。上述した村の守護者制度の強化に加え、10月末にはクルド人の中心都市であるトルコ南東部のディヤルバクル県の共同市長、ギュルタン・クシャナクとフラット・アンルがPKKとの関係を疑われ、拘束、逮捕された。さらに11月3日にも同様にPKKとの関係を疑われた人民民主党(HDP)の議員11名が拘束され、その後、共同党首のセラハッティン・デミルタシュとフィゲン・ユクセクダーを含む8人が逮捕された。HDPは昨年6月7日と11月1日の総選挙でクルド系の政党として初めて大国民議会で議席を得ており、現在でも59議席を有しており、この逮捕は国内外に衝撃を与えている。
いずれにせよ、テロとの戦いはトルコの喫緊の課題であり、テロの撲滅がトルコの経済発展にもつながることは確実である。エルドアン大統領は、クーデタ未遂後に発動され、その後も延長している国家非常事態宣言は、脅威がなくなるまで継続すると発言している。また、シリア内戦もアレッポでの戦闘、そして近い将来予想されるISの本拠地、ラッカでの戦闘により、さらに難民がトルコに流入する恐れがある。こうした中、今後、ますます内務省の役割が重要になっていくことは間違いない。