最新記事

中国の次世代ステルス戦闘機「殲20」、デモ飛行が意味するもの

2016年11月4日(金)18時51分

 中国・珠海市で開催された国際航空宇宙博覧会において、初めて一般公開飛行を行った中国の次世代ステルス機「殲20(J20)」が披露したのはごう音だけにとどまらない。

 航空・軍事分野における超大国を目指す中国は、その野望を改めて世界中に響きわたらせた。ロイターは今月、中国のJ20が、米防衛大手ロッキード・マーチン製のF22戦闘機の対抗機になり得ると報じた。

 中国の習近平国家主席は軍事改革を進めている。汚職を一掃し、新たな部隊を増やし、兵器を更新している。同国はまた、南シナ海における領有権の主張を強め、国際社会と争っている。

 景気が停滞し、最近では軍事費の減少が見られるとはいえ、中国は依然として世界第2位の軍事大国である。

 中国は新しい兵器や防衛システムの自国製造を増やしている。これまではそうした軍需品をロシアとウクライナに頼っていた。ストックホルム国際平和研究所によると、中国は2005年、ロシアからの武器輸入は過去最高を記録したが、その後2年間で50%減少している。

 減少の背景には多くの要因があるが、中国で独自の軍需産業が成長していることもその1つ。また、中国が自国の戦闘機「殲11B(J11B)」にロシアのテクノロジーを解析して模倣した懸念もあったためだ。

 中国と技術盗難問題を抱えているのはロシアだけではない。今年に入り、F22とF35戦闘機に関連する軍事機密を盗み、中国企業に売ろうとした罪で、中国人ビジネスマンが米国で4年の実刑判決を受けた。中国政府は関与を否定している。米国は1989年以降、中国に対して武器禁輸措置を取っている。

 米国防総省が最近発表した報告書は、中国が開発中の大規模な極超音速の風洞「JF12」を試験するための新たな施設に注目している。同報告書によると、この風洞は世界最大とみられ、マッハ5から9の空力条件を再現することが可能だという。

 中国の次世代ステルス機J20のデモ飛行に何らかの意味があるとすれば、それは中国が確実に目的に向かっているということだろう。

[1日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独インフレ率、11月は前年比2.4% コアインフレ

ワールド

イスラエルとヒズボラ、互いに停戦違反非難 レバノン

ワールド

オーストラリア、16歳未満のSNS禁止へ 1月から

ワールド

豪中銀総裁「当面は利下げできず」 コアインフレ依然
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖値改善の可能性も【最新研究】
  • 2
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    トランプを勝たせたアメリカは馬鹿でも人種差別主義…
  • 5
    谷間が丸出し、下は穿かず? 母になったヘイリー・ビ…
  • 6
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 7
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 8
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 9
    日本を標的にする「サイバー攻撃者」ランキング 2位…
  • 10
    NewJeansはNewJeansじゃなくなる? 5人と生みの親ミ…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 9
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中