シンガポール企業の破綻増加か、銀行が社債の借換えに及び腰
10月31日、ロイターのデータによると、2017年末までに償還期限を迎えるシンガポール企業の社債は124億米ドル強に達する見通し。しかし銀行は資源セクターへの貸し出しに及び腰のため、今後は企業の経営破綻が一段と増加しそうだ。写真は同国の金融街。2014年4月撮影(2016年 ロイター/Edgar Su)
ロイターのデータによると、2017年末までに償還期限を迎えるシンガポール企業の社債は124億米ドル強に達する見通しだ。しかし銀行は資源セクターへの貸し出しに及び腰のため、今後は企業の経営破綻が一段と増加しそうだ。
シンガポール企業のバランスシートは既に逼迫(ひっぱく)している。ロイターが非金融企業228社の上半期決算を調べたところ、純債務のコア利益に対する比率がクレジットアナリストが懸念を抱く目安とされる5倍を超えている社が74社に達し、3分の1では純債務のコア利益に対する比率が10倍以上だった。
シュローダーズ・インベストメント・マネジメントの日本を除くアジア信用調査部門のヘッド、Raymond Chia氏は「シンガポール企業は2009年以降、経営破綻が起きない状態が続いていたが、昨年から今年にかけて破綻が相次いだ。コモディティ関連に限らず多くのセクターにとって、借り換えを巡る信頼が危機に直面していることを示す危ない兆候だ」と話す。
シンガポールでは資本市場が抱える構造的な問題から、企業が世界的な貿易の落ち込みや中国の成長鈍化の影響を受けやすい。
中央銀行が昨年発表した資料によると、シンガポールは2014年時点でシンガポールドル建て社債のへの投資の約半分をプライベートバンクが占めていた。
プライベートバンクの市場参入に伴って小規模な社債発行が増えており、アナリストによると、こうした案件は格付け会社の審査を受けておらず、富裕な個人投資家を対象にしているという。
ドイツ銀行のアジア信用調査部門のヘッドのハルシュ・アガルワル氏は「これらの起債のほとんどは格付けを受けておらず、格付け会社による審査から漏れている。その多くはプライシングが適正ではなく、高利回り債の部類に属するのに投資適格級のように扱われている」と話す。
足元ではこうした不適正なプライシングの修正が進んでいるが、その際に企業で大きなコストが発生している。