最新記事

航空機

国産か外国製か、性能かコストか、自衛隊の次期戦闘機が迫られる選択

2016年10月12日(水)19時16分

10月12日、北朝鮮の脅威と中国の海洋進出に直面する日本は、限られた時間と予算の中で効率的に防衛力を整備する必要性に迫られている。写真は防衛省が開発を進めている国産ステルス戦闘機の試験機。愛知県豊山町にある三菱重工業の名古屋航空宇宙システム製作所で1月撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

 北朝鮮の脅威と中国の海洋進出に直面する日本は、限られた時間と予算の中で効率的に防衛力を整備する必要性に迫られている。防衛装備庁が検討中の次期戦闘機も、高性能だが巨額の費用がかかる機体を調達するのか、性能は標準的だが手ごろなコストの機体を調達するのか、選択を求められている。

 開発と維持整備を合わせた総事業費が4兆円といわれるこの巨大プロジェクトの行方には、世界の防衛産業が注目。12日から東京・台場で始まった国際航空宇宙産業展に参加する企業関係者の間でも関心が高まっている。

日本の防衛産業の将来

 航空自衛隊の現有機F2の代替を検討している日本は、F3と呼ばれる次期戦闘機を国内で単独開発するのか、外国企業と共同開発するのか、完成品を輸入するのか、2018年度にも方針を決定する。2020年代終わりごろの配備開始を目指している。

 複数の関係者によると、日本国内には空自や防衛産業を中心に、米軍のステルス機F22を超える世界最高水準の戦闘機を求める声が出ている。一方で、一定水準の性能を満たした安価な機体を求める声もある。

 高性能の機体開発を選択すれば、開発費が膨らむことが予想されるが、防衛費の増加が見込めずにジリ貧の国内防衛産業の維持につながる。安価な機体を選べば、他の武器調達にも予算を回せるうえ、戦闘機の数をそろえたい新興国への輸出も視野に入る。

 「日本の防衛産業の将来を左右する問題だ」と、都内で開催中の国際航空宇宙展に参加する企業関係者は指摘する。「増大する中国の脅威と、差し迫った北朝鮮の脅威を考えれば、優先すべきは防衛産業の維持ではなく、現実的な防衛力の整備だろう」と、同関係者は言う。

F2の経験

 米軍のF16をベースに三菱重工業 <7011.T>と米ロッキード・マーチン が共同開発し、日本国内で製造したF2は、開発コストが当初見込みの2倍の3000億円以上に膨らんだ。世界で初めて主翼に炭素繊維を使った意欲作だったが、ヒビが発生するなどして完成が遅れた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中